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利益誘導? 投稿者:樽一弥 投稿日:2001/10/31(Wed) 19:44:00 No.612
マンション問題のNPOを設立準備していますが、
1.個々の事情に応じて弁護士や建築士、関係する施工業者等への橋渡しをする必要があります。
この場合、士業の方や企業を特定することは利益誘導となりますが可能でしょうか?
2.容易に相談できる環境を作りたい為に、会費徴収を行わないで運営しようと思います。
この場合、橋渡しをした士業や企業から、報酬を受け取ることは可能でしょうか?
3.理事就任予定者が士業(弁護士や建築士など)や企業内の人の場合、自己の事務所・企業で
業務受託をすることは可能でしょうか?

利益誘導、受託?誘導となりますが、相談の中身によっては特定の専門家や信頼し得る企業
の受け皿が必要です。さらに分譲マンションの場合、管理組合が財産管理しているので
会費徴収は総会決議を経る必要がある為、問題を先送りにするケースが大半です。
この為、会費徴収という枠をはずし、広く解決のアドバイスをしたいと思っています。
一方、具体的解決となると職能域の問題があり、専門家に業務を橋渡ししなければなりませ
ん。設立メンバーが各々の問題意識を持った専門家であるので、自己の業務受託する為の
NPOとの解釈もあり、設立を躊躇しています。
Re: 利益誘導? 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2001/11/06(Tue) 21:26:00 No.613
樽さま

ご投稿ありがとうございました。お答えが遅くなりすみませんでした。
お尋ねの件、シーズの運営委員で弁護士の浅野晋氏に問い合わせていました。
以下は浅野弁護士からの回答です。どうぞご参照ください。

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この質問は、NPO法の第3条に関係します。NPO法の第3条には、次のように
定めがあります。

「特定非営利活動法人は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、
その事業を行ってはならない。」

おたずねの「1.」については、樽さんの団体が、ある「特定」の弁護士や建築士、
施工業者の利益を図るために、このような橋渡しをする場合には、この条文に違反
すると思われます。

しかし、相談者の利益を図るために、樽さんの団体が良いと考える弁護士、業者等
に橋渡しすることは、それが結果的に特定の弁護士、業者等の利益となったとして
も、NPO法上は全く問題はありません。

ただし、特定の業者から紹介料等の報酬をもらっていると、その業者の利益を図る
目的で事業を行っているのでないかと疑われる可能性もありますので、紹介先の選
考には、相談者の利益に適合している照会先であって、公正なものである必要があ
ると思われます。

「2.」については、会員から会費を徴収しないのは、団体の自由です。相談者を弁
護士に紹介して、弁護士からその報酬を受けることについては、税法的には仲介業
になると思われ、NPO法人が仲介業を行うことについては制限はありませんが、
NPO法ではなく、弁護士法に違反する恐れがあります。

弁護士法第72条は、
「弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訴事件及び審査請求、・・・
(中略)・・又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。・・・」
と定めており、この「橋渡し」は弁護士法第72条の「周旋」に該当するように解
されます。

したがって、無償の場合は弁護士法第72条違反とはなりませんが、有償の場合は、
同法違反となる恐れがあります。
建築士や施行業者については、法律で規制がありませんので、違法の問題は生じま
せん。

「3.」のご質問については、理事が業務受託すること自体は法的にいけない訳では
ありませんが、それが「相談者の利益に適合しているのか」「公正か」といった疑
いが生じる恐れがあり、それにより特定の者の利益を目的として事業を行っている
と誤解される可能性もありますので、注意が必要です。
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以上が浅野弁護士からの回答です。

なお、回答の中の弁護士法第72条について、ある資料もいただきました。その資
料に書かれている内容を以下にご紹介します。

「・・・一定の入会金や会費を支払って会員となった者に、その他のサービスと併
せて無料で法律相談に応ずるとしたり、弁護士を無料で紹介するといった組織を作
った場合、・・・(中略)・・・入会金、会費と法律相談、弁護士紹介との間に対
価的関係があるかは、運営形態等をもとにして判断しなければならないが、入会金、
会費が法律相談等に対する直接的な対価的関係に立たないとしても、間接的な対価
関係(会費等を支払った者のみに対して法律相談等を行うものであるから、そこに
は関連性がある)は認められる場合が多いであろうから、入会者勧誘や営業活動の
一環とは全く認められない純粋のサービスといったものでない限り、『報酬を得る
目的』があるものと認定されるであろう」

つまり、無料で弁護士を紹介する場合でも、その紹介サービスが会員に限ったもの
であって、会員から会費を徴収していれば、やはり弁護士法違反となる恐れがある
ということです。

それでは、またご質問がありましたらお寄せください。

シーズ事務局・轟木 洋子

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