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記事No 243
件名 Re: 固定資産と減価償却について
投稿日 : 2000/12/29(Fri) 19:20:00
投稿者 公認会計士・赤塚和俊
参照先
白水さん
 公認会計士の赤塚です。
(1) 寄贈物品は評価額で資産に計上すること。
(2) NPO法人は減価償却をしなくてもいいこと。
(3) 10万円以上で耐用年数が1年以上のものを固定資産とすること。
は、いずれもその通りで結構です。
 なお、(3)の金額基準は10万円でなくても、その法人で決めた金額で構
いません。ただし、法人税法上の収益事業を行っている場合は、法人税法に
合わせて、10万円としておいた方が便利です。
 (2)の減価償却はしてもしなくてもいいのですが、同じく法人税法上の収
益事業を行っている場合は、法人税法の耐用年数で減価償却した方がいいでし
ょう。法人税法では、決算で減価償却を行っていない場合は、その分の経費が
損金と認められません。
 減価償却の方法としては、定額法と定率法があります。それぞれの計算方法
は下記の通りですが、わかりやすいのは定額法、収益事業の経費にするのに有
利なのは定率法です。
 収益事業の場合は、特に税務署に届けなければ定率法になります。定額法に
したければ、その旨届けなければなりません。
 計算方法ですが、取得価額が10万円で耐用年数が5年の備品を例に説明し
ます。
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A.定額法
 10万円-1万円(残存価額)=9万円
 (残存価額は、取得価額の10%の金額です、ただし収益事業でなければ残
存価額は0としても構いません)
 9万円÷5年(耐用年数)=18,000円
で、毎年18,000円ずつ減価償却します。残存価額0であれば2万円です。
 5年目で簿価(取得価額から減価償却累計額を引いた金額)が1万円(残存
価額)になります(1年目に月割り計算や2分の1償却を行った場合は、多少
金額の差があります)。
 法人税法では備忘価額(これ以上減価償却をしてはいけない金額)を取得価
額の5%としていますので、6年目に5,000円を償却して簿価を5,000円
にします(1年目が2分の1償却であれば、6年目は14,000円の償却でや
はり簿価が5,000円になります)。
 法人税法上の収益事業でなければ、備忘価額は5%でなくても構いません。
1円でもいいのです。減価償却が終了(耐用年数を経過)しても、備忘価額(取
得価額の5%もしくは法人で決めた金額)が、貸借対照表及び財産目録に記載さ
れます。
 その資産を本当に除却した時に、簿価(減価償却が終了していれば備忘価額)
を貸借対照表及び財産目録から消します。
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B.定率法
 定率法の計算式は次の通りです。
 簿価×定率=減価償却額(1年目の簿価は取得価額です)
定率は耐用年数ごとに決まっています。5年であれば0.369、6年であれば
0.319、10年なら0.206です。
 この例では、1年目の減価償却額は
100,000×0.369=36,900
で、償却後の簿価は63,100円となります(1年目に月割り計算や2分の1
償却を行った場合は、金額の差があります)。
 2年目の減価償却額は
63,100×0.369=23,283
で、償却後の簿価は39,817円となります
 定率法でも耐用年数を経過したら簿価は残存価額(取得価額の10%)にな
ります。さらに備忘価額(取得価額の5%)まで減価償却する点、除却するま
では備忘価額で貸借対照表に計上する点は定額法と同じです。
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C.取得時の会計処理
 白水さんの例
  (借方)           (貸方)
① 備品購入費   100,000/現金      100,000
② 固定資産    100,000/運用財産    100,000
は、社会福祉法人の旧会計基準の仕訳ですね。新会計基準では、
① 備品取得支出  100,000/現金      100,000
だけで、②の仕訳は不要です。
 公益法人会計基準では
  (借方)           (貸方)
① 備品購入支出  100,000/現金      100,000
② 固定資産    100,000/備品購入額   100,000
となります。
 社会福祉法人の旧会計基準や公益法人会計基準では、収支計算書と貸借対照
表をつなぐために、いずれも②の仕訳を必要としているのです。
 NPO法人は社会福祉法人会計基準や公益法人会計基準にならう必要はあり
ません。あえて収支計算書と貸借対照表をつなぐことを考えなくてもいいので
す。借方は備品購入費でも備品取得支出でも備品購入支出でも構いませんが、
いずれにせよ上記の①の仕訳だけでいいのです。
 あるいは、企業会計やNPOアカウンタビリティ研究会の「会計指針公開草
案」の標準型のように
  (借方)           (貸方)
  備品      100,000/現金      100,000
として、収支計算書(もしくは活動計算書)には計上せずに貸借対照表にだけ
反映させる方法でも構いません。
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D.減価償却時の会計処理
 減価償却をしてもしなくてもいいのは、前に書いた通りです。もちろん法人
としてどちらかに決める必要はあります。資産ごとに償却したりしなかったり
一貫しないのはだめです。
 減価償却をする場合のやり方には直接法と間接法があります。直接法は、
  (借方)           (貸方)
  減価償却額    18,000/備品        18,000
として、備品勘定の残高を常に簿価に合わせる方法です。
 間接法は
  (借方)           (貸方)
  減価償却額    18,000/備品減価償却累計額 18,000
として、帳簿上は取得価額を残し、貸借対照表で取得価額と減価償却累計額を
相殺する方法です。
 いずれにせよ、企業会計方式をとった場合には借方の減価償却費が収支計算
書に計上されますし、NPOアカウンタビリティ研究会の「会計指針公開草案」
の標準型であれば活動計算書に減価償却費が計上されますが、資金収支ベース
の収支計算書であれば、減価償却額は計上されず、貸借対照表の計上金額が減
価償却累計額の分だけ減少していくことになります。
 なお、公益法人会計基準に準じた決算書であれば減価償却額は正味財産増減
計算書に計上されることになりますが、NPO法人の場合に公益法人会計基準
や経済企画庁のNPO法人のモデル例を採用することはお勧めできません。
 NPOアカウンタビリティ研究会の公開草案は、私の書いた花伝社刊「NP
O法人の税務」に収録しています。
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E.除却時の会計処理
 白水さんの
  (借方)           (貸方)
  運用財産      9,000/固定資産      9,000
は、やはり社会福祉法人の旧会計基準の仕訳です。
 公益法人会計基準では
  (借方)           (貸方)
  備品除却額     9,000/備品        9,000
となります。
 企業会計であれば、
  (借方)           (貸方)
  備品除却損     9,000/備品        9,000
です。
 いずれにせよ、除却価額の計上は減価償却額の計上に準じますから、資金収
支ベースの収支計算書であれば除却額は計上されず、貸借対照表の計上金額が
除却時の簿価分だけ減少することになります。

                        公認会計士・赤塚和俊

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