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記事No 259
件名 Re: 法人の必要経費について
投稿日 : 2001/01/25(Thu) 11:45:00
投稿者 赤塚和俊
参照先
加藤昌雄さん

 ご質問のケースは、非常に複雑な問題を含んでいます。
まず、第一に、連携して「サポート事業」を行う主体は
誰なのか、という問題です。①NPO法人もしくは他の
法人格(たとえば営利法人)を設立するのか、②法人格
を持たずに共同事業として行うのか、ということです。
ご質問の内容からすると②だと思います。

 次に、共同で行う「サポート事業」の事業内容ですが、
(A)共同事業体それ自体がサービスの対価を受け取っ
て事業を営むのか、それとも(B)連携する各団体の拠
出金のみで運営されるのか、ということです。

 (A)であれば、さらに、サービスの対価が法人税法
上の収益事業に該当するのかどうかという問題が出てき
ますが、ご質問のケースは(B)だと思います。(実費
の範囲内であれば基本的には収益事業とはならず、上の
(B)に該当します。)

 以下、上記の②-(B)を前提としてご説明します。
もし、前提が違うのであればまたご質問下さい。

 三番目に、この事業に参加する各団体が、(イ)法人
税法上の収益事業を行っているか、(ロ)行っていない
かという点です。介護保険事業を行っていれば(イ)で
すが、「自立援助」だけならば(ロ)の可能性もありま
す。

 (ロ)であれば、そもそも税法上経費となるかどうか
という問題自体存在しないのですが、一般的な法人の経
理として未払金としていいかという問題は残ります。

 「総会承認後6月以降に支払う」というのは、たぶん
3月決算だからという意味だと思いますが(余談ですが
個人的には決算期を3月にするのはやめてほしいと思い
ます)、前年度分であることが明らかであれば、決算処
理で未払金に計上して構いません。

 (イ)の場合は、さらに二つのケースがあります。
(a)拠出金が構成団体の行う収益事業の原価(必要経
費)となるか、(b)ならないか、ということです。
(b)であれば、前記(ロ)と同じことで、決算上は特
に問題ありません。

 この(a)に該当するかどうかというのがご質問の要
点の一つだと思います。ケースバイケースですから、断
定的なことは言えないのですが、基本的には、共同で行
う事業が構成団体の行う収益事業に関連するものであれ
ば必要経費となります。

 仮に直接原価を構成するようなものでなくても、たと
えば啓蒙広報活動であろうと、人材養成であろうと関連
に含まれます。ご質問の中では⑤短期貸付以外は経費と
考えていいでしょう。ただし、次の問題が残ります。

 法人税法上は、共同で行う事業も、その共同事業体が
法人格を持っていない場合は、その拠出割合に応じて、
構成団体の事業の一部と見なされます。

 つまり、拠出金を年度内に使い切っていればいいので
すが、使い切っていない場合は、残った部分は構成団体
の必要経費とは認められないということです。もちろん
翌年度に使えばその時点で必要経費になります。

 貸付金などはお金が出ていても税法上は経費ではあり
ません(資産計上です)から、構成団体の必要経費(損
金)にはなりません。

 なお、構成団体の決算上、拠出金を未払金として経費
処理すること自体は問題ありません。損金にならない部
分の金額だけ、法人税の申告書の中で損金不算入として
所得に加算すればいいのです。

 未払金という以上は、誰かが立て替え払いしていたも
のを後から拠出金で補填するのない限り、実際に使われ
るのは翌年度だと思いますので、未払金を計上した年度
の法人税法上の必要経費(損金)というのは無理がある
でしょう。

 実際にその拠出金を使った、たとえば翌年度に、法人
税の申告書の中で損金算入して、所得を減算することに
なります。さらに翌年度分の新たな拠出を未払いとすれ
ばその分が損金不算入となり、以下順繰りになります。

      公認会計士・赤塚和俊

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