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記事No 261
件名 Re: 法人の必要経費について
投稿日 : 2001/02/02(Fri) 04:03:00
投稿者 公認会計士・赤塚和俊
参照先
加藤さん

 前回の回答は、法人格を持たない協同事業を念頭において答えましたので、
若干説明不足でした。改めてお答えします。

>①サポート事業の主体は、すでに特定非営利活動法人となっている法人です。
>②拠出に関しましては、連携する(「サポート事業」提携契約を締結する)各
>団体の拠出金をベースにして運営する構想です。

 サポート事業の主体が法人格を持っている場合は、さらに二つに分けて考える
必要があります。一つは、完全に法人の判断と責任のもとに事業を行うケースで
す(これをケースAとします)。もう一つは、法人の中に特別会計を設け、その
特別会計の運営には拠出団体もかかわるというケースです(ケースBとします)。
 前者と後者を区別するポイントは、その事業の経理処理にあります。ケースA
の場合、サポート事業が仮に赤字となった場合は、その事業主体が責任を持つ代
わりに、黒字となればその法人の収益になります。
 ケースBであれば、赤字についても共同責任であり、特別会計の資産は拠出団
体の共有財産(拠出割合に応じた持分を持つ)となります。極端なことを言えば、
事業を脱退する団体があれば残余の資産の拠出割合分を返還することになります。

 サポート事業そのものが、対価を得て収益事業を営むものであれば、ケースB
の運営方法は、利益の配分を禁止するNPO法に抵触することになりますので、
ケースAの方法しかないと思います。なお、判断の難しいところはありますが、
実費徴収は対価とは言えないので収益事業には該当しません。

 ケースAの場合(サポート事業の主体の責任で事業を行う場合)は、拠出団体
は、契約でサポートを受ける対価として拠出金(負担金)を支払うわけですから、
当然、税法上は損金になります(ここでは、サポート事業が拠出団体の収益事業
に関連するサポートを行うことを前提とします)。
 ただし、年度帰属の問題は残ります。翌年度分の負担金を前払いするのであれ
ば、決算上は資産計上(前払金)し、翌年度に経費に振り替えることになります。

 要するにケースAは請負契約であり、ケースBは協同事業です。このどちらで
あるかは契約(または規約)上、明確にしておく必要があります。前者であれば、
拠出団体の拠出金は(年度帰属の問題を別にすれば)問題なく損金になります。
サポート事業を行う主体の側で収益事業と解釈されるのと表裏の関係です。以下、
後者(ケースB・協同事業のケース)を中心にお答えします。

>③この事業に参画する団体は、在宅福祉サービス(訪問介護事業を含む)に取
>り組んでいる団体ですので、基本的に税法上の収益事業を行なっている団体と
>なります。

 サポート事業が、その参画する団体の行う(税法上の)収益事業に関わるサー
ビスを提供するのであれば、拠出金は、原則としてその各団体の経費(損金)と
なります。ただし、その年度帰属については後で述べるような問題があります。

>④サービスの中で「短期貸付」というのは、介護保険制度に参画している各団
>体の介護保険事業収入が、制度上サービス提供の翌々月になるために、必要と
>する団体に対し対価支払いのつなぎ資金として無利息貸付けを行い、事業収入
>があった時点で即時返還してもらおうという考え方です。ここで、一つお聞き
>したいのですが、特定非営利活動法人の各団体が資金を出し合って運営(プー
>ル)し、資金の必要な団体に対し無利息貸付を行なうことが税法上はどのよう
>に解釈されるのでしょうか。

 営利企業であれば、経済行為として無利息の貸付を行うことはありえないので
貸付先への利益供与とみなされ、利息収入があったとして課税される(認定利息
といいます)こともありますが、非営利が前提となっているNPO法人に同じこ
とが行われることはありません。
 その原資が拠出しあった(プールした)資金であっても構いません。ただし、
この場合、貸してあるお金は資産(いずれ返ってくるお金)ですから、拠出した
負担金は、税法上の損金にはなりません。ケースAの場合でも、貸付金は運営す
る法人の経費(損金)にはなりません。
 セミナーその他で費消した部分については、その使った年度の経費(損金)に
なります。ケースBの場合、拠出した金額のうち費消した金額部分です。

>⑤次に決算処理についてですが、2001年度に実施される「サポート事業」の
>拠出金を各団体の2000年度事業収入実績に基づいて定める場合、2000年度
>決算で前払いとして損金(経費)扱いすることは無理があるでしょうか。

 2000年度の事業収入実績に基づいて決まるのはあくまで拠出の金額であって、
それが実際に「サポート事業」に使われるのは2001年度ですから、2000年度の
決算で経費にするわけにはいきません。
 ケースAで、年会費を同年度の事業収入実績に応じて決定するという契約なら
別ですが、その場合は、決算を終える前に事業収入実績が確定するのだろうか、
という疑問が残ります。
 ケースBでは、翌年度以降の経費となるのは当然ですし、翌年度末においても
たとえば貸付金のような資産が残っていれば経費とはならないのは、前に述べた
とおりです。

>それを可能にするためにどのような要件が考えられるでしょうか。たとえば、
>(1)「サポート事業」実施主体と各団体との間で契約が締結されている。
>(2)拠出する金額と受け取るサービスの金額的バランス(妥当性)がとれ
>ていること。(このことにつきましては、情報の収集・提供、危機管理の認
>識を高めるような学習や話し合い、ケアサービスの質を高めるためのさま
>ざまなサービスなど具体的に定額化することが容易でないものについては、
>税法上どのように判断すればよいのでしょうか)(3)2000年度中に入金が
>完了している、等。

 (1)、(3)については、前に述べたとおりです。(2)については、あまり
気にする必要はありません。単年度で見れば多く拠出した団体よりも少ない負
担の団体の方が、受け取るサービスが多いというようなことは起こるでしょう
が、それがそもそも相互扶助の趣旨の一つなのですから、問題ありません。
 問題になるのは、毎年拠出する一方で全く受益のないような場合です。もし
そういう団体があれば経費とはならないかも知れません。寄付金と解釈される
からです。

>⑥各団体から拠出を受けサポート事業を行う法人では、その拠出金をどのよ
>うに扱うのが妥当でしょうか。

 ケースAであれば、その法人の収益です。その事業にかかったコストが損金
になります。ケースBであれば、本質的には預り金です。受け取った拠出金は
預り金の受け入れであり、使ったお金は預り金の支出です。問題は貸付金です
が、貸付金は貸付金として資産計上した方がいいでしょう。預り金の収入と支
出の差が特別会計の期末現金預金と貸付金の合計になります。
 サポート事業の費用内訳を管理するためには、預り金の支出に関する補助簿
も作った方がいいでしょう。

>⑦拠出金を1年間運営して、もし剰余金が出た場合は、どのように対応する
>ことがよいでしょうか。拠出する側と、サポート事業を行う側の両方につい
>て教えて下さい。

 剰余金の意味がよくわからないのですが、もし「サポート事業」そのものが対
価を得て収益事業として営まれるのであれば、ケースAしかあり得ませんし、
そうであれば通常の収益事業の利益と全く同じです。

 ケースBであれば、拠出金を預かった「サポート事業」を行う法人にとっては
それは「剰余金」ではなく、預かったお金がまだ使われずに残っているだけです
から、別に問題はありません。
 拠出する側にとっては、お金が使われずに残った部分は前払金のままで経費
処理はできないことになります。

>⑧2001年度に実施される「サポート事業」の拠出を2001年6月に行なうと
>して、各団体の2000年度事業収入実績に基づいて定めることは税法上問題あ
>りませんか。

 拠出金の算定基礎として前年度の事業収入実績をもとにすること自体は問題
ありません。ケースAであれば、2001年度分の拠出金であれば2001年度の経
費となります。ケースBであれば、税法上はいったん前払金となり、その拠出
金が費消された時点で経費(損金)と認められることになります。

                   公認会計士・赤塚和俊

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