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記事No 2642
件名 Re: 行政との「協働」と「委託」について
投稿日 : 2003/09/26(Fri) 13:32:00
投稿者 シーズ・治田 友香
参照先
愛媛の木村ですさん、

シーズの治田です。
事務局長の松原が回答させていただくことになっておりましたが、誠に申し訳あり
ませんが、多忙をきわめており、私が代わって回答させていただきます。

「自治体とNPOとの協働」、「NPOへの委託」、また「NPO支援」については、現在、
多くの自治体で実施や検討が進められています。
各自治体の取り組みについては、シーズが千葉県から委託を受けて実施した調査報
告書『地方自治体のNPO支援策等に関する実態調査』を参考にしていただきたいと
思います。その中に、都道府県や市区町村の協働の指針やガイドラインなどの一覧
もあります。

この報告書の入手については、
http://www.npoweb.gr.jp/aboutcs/cs_info.php3?article_id=807 をご覧ください。

また、ちょっと重いのですがPDFで読むこともできます。もしよろしければご参照
ください。


さて、「委託」とは、一般に、国や地方自治体が、その権限の属している事務や事業
を、NPOや企業などの団体、または特定の人に行わせ、その代わりに委託費を支払
うことです。

一方、「協働」という言葉には、現在のところ、はっきりとした定義はありません。
自治体ごとに、さまざまに定義づけされて使われているようです。

定義の一例として、千葉県が策定中の「(仮称)パートナーシップマニュアル」を紹
介したいと思います。今年度中に策定予定で、現在、骨子案のパブリックコメントを
終えたところです。

ここでは、「協働」と「パートナーシップ」を分けて整理しています。

また、パートーシップの形態として、企画立案への参画、補助、委託、共催、後援、
事業協力、公共施設等の提供、実行委員会・協議会、情報交換・意見交換などの形態
がある、としています。つまり、協働の一形態として委託をあげています。

以下に抜粋してご紹介いたします。

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千葉県:(仮称)パートナーシップマニュアル骨子案
(略)

第2章 NPOとのパートナーシップ

(略)

パートナーシップと支援、協働と外部委託等の違いを理解しておくことが、パートナー
シップを進める上では不可欠です。

・千葉県NPO活動推進指針では、パートナーシップと協働とを以下のように区別してい
ます。

・パートナーシップとは、二者以上の主体がお互いの役割分担を明確にした上で、事業
の推進を提携して行うなど、継続的な関係を持つことを指します。協働よりも広い概念
で、「協働」の他に、外部委託や、目的を共有した上での定期的な協議・情報交換、PF
Iなどを含みます。

・協働とは、性格の異なる二者以上の主体が、対等の立場で、それぞれの目的を踏まえ
た上で、共通して取り組む目的及び事業の設定、その事業における役割分担などを行い、
一つの事業を協力して推進することをいいます。外部委託の場合は、委託者が目的や事
業内容を定め、それを外部の受託者に遂行させることに対し、協働とは、相互の協議も
しくは提案の元に、共通の目的と事業を設定することで、それぞれの独自の目的を達成
することを図るものです。

(略)

・パートナーシップ事業
パートナーシップの形態は、大きく分けると、パートナーシップ事業とそれ以外のパー
トナーシップに分かれます。パートナーシップ事業は、二つ以上の担い手が、共通する
目的をもって、継続的に関係を結び、計画の策定や実施などを行う場合に、それを
「パートナーシップ事業」と呼びます。
また、共通する目的のために、定期的に情報交換を行うなどしながら、それぞれが役割
分担を行って、別個に事業を行う場合もあります。このような場合は、パートナーシッ
プ事業とは呼びませんが、しかし、両者の間にはパートナーシップが存在するといえま
す。

・パートナーシップ事業と支援事業は区別することが重要です。個々のNPOの能力や役割
を重視して、その能力や役割が、行政施策の目的遂行力や質を高めることがパートナー
シップ事業には期待されています。一方、支援事業は、行政が相手を支援すること自体
が目的で、他の行政目的を遂行するためにパートナーの力と連携するものではありませ
ん。たとえば、県行政では、NPO支援策として、「NPO実務講座」や「NPO活動費補助金事
業」を展開していますが、これらは支援事業で、パートナーシップ事業ではありません。

もちろん、行政と課題や目的を同じくするNPOの事業に対して補助金を支出することもあ
りますが、これはパートナーシップ事業であると考えるべきです。同じ補助金を出す場
合でも、支援事業とパートナーシップ事業を区別して捉えることが必要です。

・補助金と同様に、(外部)委託事業でも、外注事業とパートナーシップ事業に分かれ
ます。行政が、事業内容や期待する成果を設計して、それが適切に効率よく出来る団体
ならどのような団体でも良しとして、外部委託を行う場合、それはパートナーシップ事
業とはいいません。パートナーシップ事業では、まず、パートナーとして求める相手の
能力や提案などを重視した上で、解決したい課題や期待する成果に関して、再設計して
いくことが必要となってきます。たとえば、地域の活性化ということで、行政が集客施
設を作ることを決定して、その建設を業者に任せます。それは、外注事業といいます。
一方、地域の活性化という課題の下、どのような事業が必要かについて、NPOから提案を
受け、その提案のうち行政が目的によりよく貢献すると考えるもの(たとえば、NPOに
よる商店街における子育て支援設備の開設など)を事業化して、委託するなどといった
場合は、その事業にしたがって、期待する成果が変わってきますので、再設計を行うこ
とになります。このような事業はパートナーシップ事業といえます。

・公園の管理を委託する場合でも、ただ単に、公園の入出園管理や行政が企画した植林
などの実施を行うだけの事業を委託するのは、外注事業というものです。パートナーシ
ップ事業の場合は、公園の管理を委託するだけでなく、どのような公園にするのか、そ
の公園でどのようなプログラムを実施するのか、有料か無料かなどについて、パートナ
ーと協議し、目標や成果、委託内容などを決めた上で、委託することになります。

・パートナーシップは、広い概念で、委託や補助の他、情報交換や事業協定、企画立案
への参画、実行委員会などの形式を含んでいます。このうち、単なる役割を分担した上
での継続的関係でなく、事業目標の設計や成果の設計、その実施において共同で行い(発
案の側は行政やNPOのどちらでも構いません)、役割分担を決めて実施していく形式を協
働事業と呼んでいます。たとえば定期的な情報交換やアドバイスを受けるためにNPOと
継続的関係を結んでいるとした場合、パートナーシップ事業とはいいますが、協働事業
とはいいません。

(略)


第5章 パートナーシップのためのさまざまな手法

(略)

パートーシップの形態としては、企画立案への参画、補助、委託、共催、後援、事業協
力、公共施設等の提供、実行委員会・協議会、情報交換・意見交換などの形態がありま
す。事業目的に沿って、適切な形態を選択することが必要です。


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以上、参考にしていただければと思います。
ただし、この定義が絶対というものではありません。

シーズ事務局・治田 友香

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