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記事No 514
件名 Re: 事業開始時期について
投稿日 : 2001/09/04(Tue) 09:39:00
投稿者 公認会計士・赤塚和俊
参照先
hanyuさん

事業年度の決め方の問題ですね。おっしゃる通り株式会社の多くは
3月決算(4月1日から3月31日までの事業年度)です。NPO法
人も、圧倒的に3月決算が多くなっています。
しかし、3月決算でなければいけないという理由はありません。現
に小売関係(デパートやスーパーなど)の会社は伝統的に2月決算
や8月決算の会社が多いのです。これは繁忙期を避けたからです。
売上や在庫の少ない時期の方が決算の作業が楽だからです。
外資や海外取引の多い会社の場合は9月決算や12月決算の傾向が
見られます。3月決算は国際的には少数派です。
それでは日本で3月決算の多い理由は何かと言えば、お役所が3月
決算だからというのもありますが、上場企業の多くは単にみんな一
緒の方がいいということです。はっきり言えば総会屋対策です。目
立ちたくない。同じ日に株主総会をやれば総会屋も分散されるとい
うことです。
最近はそれでは一般株主も総会に出席しづらいということで総会開
催日をずらす会社もでてきましたが、決算期を変えるところまでは
まだいっていません。
NPO法人に3月決算が多い根拠は特にありません。しいて言えば
「ことなかれ主義」、「お役所追従」、「大勢順応」の悪癖がNPOに
も厳然としてあるということです。
お役所に合わせることで何か利点があるかと言えば、何もありませ
ん。私の関わっているある財団法人では国の助成金や委託事業が多
いのですが、出納閉鎖期間との関係で3月末ではかえって未確定要
素が多すぎて決算が煩雑になるために6月決算にしています。
それではNPO法人の場合は何月がいいかというと、それは各団体
の実状によって違うとしか言えません。会計処理の負担を考えると
小売業や前述の財団法人のように閑散期にする方がいいということ
になります。
また、私も含めて会計の専門家がボランティアで決算のお手伝いを
しようという場合には、3月決算は避けてほしいというのが本音で
す。世の中の大勢が3月決算である限り私たちはその時期はとても
ボランティアをしている余裕はありません。

最後に1仕分2取引のことですが(1取引2仕訳のことを言われて
いるのだと思いますが)、それにとらわれる必要はありません。たぶ
ん経済企画庁(当時)の「会計の手引き」もしくはそれに準じた都
道府県の「指導」か「講習」で目にされたか耳にされたのだと思い
ますが、NPOが1取引2仕訳の会計処理をしなければならないとい
うことはありません。
これは、経済企画庁が何らかの指針が必要と考えて安易に「公益法
人会計基準」のやり方を持ち込んだもので、法的根拠はありません。
むしろ、難解でかつNPOの活動を表現するには不向きです。これ
に準拠するのはやめた方がいいと思います(詳しくはこのホームペ
ージのインタビューコーナーをご覧下さい)。
参考にされるとすれば「NPOアカウンタビリティ研究会」の「公
開草案」の方がお薦めです。シーズにお問い合わせ下さい。また、
近々ぎょうせいという出版社から松原さんと水口さん(東京ボラン
ティアセンターの会計講座の常連講師)と私の共著で会計と税務に
関する入門書も刊行される予定です。こちらも参考になると思いま
す。
                 公認会計士・赤塚和俊

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