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記事No 97
件名 Re: 理事の責任について
投稿日 : 2000/06/02(Fri) 15:54:00
投稿者 シーズ事務局 轟木
参照先
佐藤さん、はじめまして。ご投稿ありがとうございます。

佐藤さんの団体では、法人格は持っていらっしゃるでしょうか? 
ここでは、法人格を持っていらっしゃる場合と、そうでない場合に分けて、お答えします。

ます、法人になっていらっしゃる場合ですが、経済的に破綻して支払い不能の状態になった時は、
破産手続きによって破産宣告を受け、破産管財人による清算業務を受けることになります。
この場合、理事が個人として負債を背負いこむ、ということはありません。

ただし、前提となるのは、その法人が団体の定款に書かれた「目的」の範囲内で活動して破産し
た場合です。もし、定款にも定めがなく、総会などでも決議されなかった事柄において負債を負
った場合は、法人ではなく、その執行に関係した会員、理事、その他関係者が連帯して賠償責任
を負うことになります。
(NPO法の準用法文である民法第43条、44条をご参照ください)

また、「NPO法コンメンタール」(日本評論社発行)は理事の責任について、次のように述べ
ています。
「(理事は)受任者として『善良な管理者の注意』義務をもって、その職務を遂行する義務を負
う(民法644条)。理事が、この善管注意義務に違反して法人に損害を与えた場合は、賠償責任
を負う」

つまり、理事は、法人が行う活動における過失や事故などに対して、通常期待されている程度の
抽象的・一般的注意義務を要求されているのです。このことから、定款に書かれた「目的」内の
動においても、事故などが発生した場合には、理事は責任を問われる可能性が出てきます。

最近、医療法人内で起きた医療ミスが裁判で争われる、というニュースがありましたが、医療法
人内で医療を行うのは目的に合った行為ですが、医療法人だけではなく、院長の責任が裁判で問
われる、ということもある訳です。
このように、法人になっていれば、理事個人の責任は全く問われない、ということにはなりませ
ん。

次に、法人格を持っていらっしゃらない場合ですが、「法人格なき団体の実務」(新日本法規発
行)は、次のように述べています。

「法人格なき社団も一定の範囲において財産を有し、取引を行う等の経済活動をなし、権利の帰
属主体となり、民事訴訟法上の当事者となる能力を有し(民訴46条・58条)、債務名義によって
執行を受ける適格を有する。
したがって破産法上に明文の規定はないが、法人格なき社団が経済的に破綻し、支払い不能の状
態に陥った場合は破産手続きにより、破産宣告を受け、破産管財人による清算業務を受けること
ができると解される(破産108条、民訴46条)」

つまり、破産法上にははっきりとは書いてないけれども、任意団体が経済的に破綻して、支払不
能になった時は、法人と同じように破産手続きによって破産宣告を受けて、破産管財人による清
算業務を受けることができる、という訳です。

しかしながら、その債務名義が問題になってくると思います。もし、法人格がなくとも団体自体
が債務の名義になっていれば、上記のような破産手続きが可能ですが、そもそも法人格がないと、
契約が団体として結べない場合がよくあります。この時には、代表者や理事が名義人となって契
約をすることが多いようですから、破産した場合は、その名義人個人が負債を負うことになって
しまいます。

この点で、団体として契約の主体になれるのは、法人格の大きなメリットのひとつとなっていま
す。

どちらにしても、理事とは、団体の舵取りをし、財政の責任者でもある方ですので、それを理解
して、実質的に動いてくださる方にお願いするのが良いのではないでしょうか。

シーズ事務局・轟木 洋子

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