記事No |
: 10458 |
件名 |
: Re: 代表権を制限した際の契約などの有効性について |
投稿日 |
: 2012/04/09(Mon) 07:11:13 |
投稿者 |
: 弁護士 浅野晋 |
参照先 |
: |
アジサイムラサキ さん
特定非営利活動促進法第16条は、理事の代表権について次のように定めています。
(理事の代表権)
第16条 理事は、すべて特定非営利活動法人の業務について、特定非営利活動法人を代表する。ただし、定款をもって、その代表権を制限することができる。
即ち、
①原則として理事全員が代表権を持つ
②定款で理事の代表権を制限し,例えば「理事長」のみが代表権を持つようにできる。
という仕組みになっています。
ご相談の定款の「副理事長は、理事長を補佐し理事長に事故あるとき又は理事長が欠けたときは、理事長が予め指名した順序によって、その職務を代行する。」という文言は、上記②の制限を、「理事長に事故あるとき又は理事長が欠けたとき」に解除し、理事長が予め指名した順序で副理事長の代表権を復活させるというものですから、当然有効な定めです。
従って、「理事長に事故あるとき又は理事長が欠けたとき」に、「理事長が予め指名した順序の副理事長」が行った代表行為は有効であるということになります。
しかし問題があります。それは「理事長に事故あるとき又は理事長が欠けたとき」というのが、対外的に不明確であるということです。理事長が死亡したときは「欠けたとき」にあたる子とは明らかですが、例えば、入院した場合とか、海外旅行の場合とか、これに該当するかどうか解釈の余地があり、権限のあるなしで法的紛争に発展する恐れがある場合があります。
このような場合に、登記なしでも副理事長に代表権があるとすれば,契約は有効ですが、代表権の有無について争いが生ずる可能性がありますので、契約の相手方としては契約の有効性について不安を抱かざるを得ないこととなります。
このように、ご質問のケースでは、契約は有効ですが、契約の相手方が果たして契約してくれるかどうかという問題が生ずることになります。
なお、この問題についての直接的判例ではありませんが、ご質問のような「代行規定」がある定款について、代行に理事長の代表権限を代行することができるとの判断をしている判例がありますので、参照してみて下さい。(判例タイムス189号172頁:東京地方裁判所昭和41年2月18日判決)
弁護士 浅野晋