記事No |
: 281 |
件名 |
: Re: 代表権、監事の責任について |
投稿日 |
: 2001/02/20(Tue) 12:04:00 |
投稿者 |
: シーズ・轟木 洋子 |
参照先 |
: |
斎藤さん、ご投稿ありがとうございます。定款作り、ご苦労さまです。
赤塚さん、いつも的確なご回答、感謝いたします。
さて、理事の代表権の制限についてですが、NPO法の16条は次の
ように述べています。
「理事は、すべて特定非営利活動法人の業務について、特定非営利活
動法人を代表する。ただし、定款をもって、その代表権を制限するこ
とができる。」
この16条にある「代表する」という意味は、「NPO法コンメンタ
ール」(日本評論社)によれば、「法人の機関である理事が、法人の
ために行為をするとき、その行為は法人自体の行為とされ、その法律
効果はすべて法人について発生する」ということです。
また、「制限」というのは、例えばNPO法人内部において、理事が
ある行為をするときに、理事会や総会の議決を必要とする、などを定
款で定めることができる、という意味で、理事が善意の第三者に対し
てとった行為について、NPO法人が責任を免れることができるとい
う意味ではありません。
NPO法30条には、民法54条の規定が準用されると書いてありま
すが、この民法54条は次のようなものです。
「理事の代理権に加えたる制限は之を以て善意の第三者に対抗するこ
とを得ず」
これらから、斎藤さんの「理事会で決定されていない行為を代表者が
執り行った場合、その行為は無効である(第三者に対抗できる)よう
にする事は可能ですか?」というお尋ねには、赤塚さんのお答えと同
じく「NO」ということになります。
次に監事ですが、同じ「NPO法コンメンタール」(日本評論社)に、
弁護士の浅野晋さんが次のように書いていらっしゃいます。
「監事は、受任者として善良な管理者の注意をもって職務を遂行する
義務がある(民法644条)。したがって、上記に記載した職務を怠
った場合は、法人に対して損害賠償責任が生ずることもありうる。
しかし、監事が職務を怠った場合に関して罰則の定めはない。なお、
本法(筆者注:NPO法)では株式会社の場合の株主代表訴訟(商法
267条・280条)のような定めをおいていないから、社員自ら職
務を怠った監事の責任を追及する訴えを提起することはできない。」
つまり、監事が善良な管理者の注意をもって職務を遂行しなかったら、
法人に対して損害賠償をしなければならないことがあるけれど、NP
O法自体には、社員(正会員)が監事の責任を追及できる規定を含ん
でいないということです。
また、赤塚さんが書いておられるように、善管注意義務、つまり「善
良な管理者の注意」をもって職務を遂行しなければなりません。
「法律学小辞典」(有斐閣)によれば、善管注意義務とは次のような
ものです。
「過失の前提となる注意義務には、行為者の具体的な注意能力に関係
なく、一般に、行為者の属する職業や社会的地位に応じて通常期待さ
れている程度の抽象的・一般的な注意義務と、当該行為者の注意能力
に応じた具体的・個別的な注意義務とがある。前者を『善良な管理者
の注意』またはこれを略して『善管注意』といい(民400・644
等)、後者を『自己の財産におけると同一の注意』という(民659
等)。通常は善良な管理者の注意が要求されており、これを欠くと、
過失(抽象的軽過失)があるものとして、債務不履行または不法行為
などの効果が生じる。」
これによると、監事が善良な管理者の注意を欠くと、過失があったと
して不法行為となることもあるようです。
加えて、NPO法49条では、理事や監事が、例えば、法に定められた書
類に記載すべき事項を記載しなかったり、不実の記載をした場合などは、
20万円以下の過料に処すると定めています。よって、法人がいかなる定
款を作ろうとも、この法に違反する場合には過料という罰則規定が適用さ
れることになります。
斎藤さん、またさらにご質問がありましたらお尋ねください。
シーズ事務局・轟木 洋子