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2003年07月28日 10:00

行政 : 「NPO」商標登録に異議申立

 7月24日、シーズを含む6つのNP0団体は、(株)角川ホールディングス(旧角川書店)が雑誌・新聞の分野で「NPO」という語を商標登録した件で、特許庁に対して異議申立をおこなった。

 

 2002年1月18日に、(株)角川書店(本年4月からは (株)角川ホールディングス、以下「角川」)は、雑誌・新聞についての商標として「NPO」を出願した。その後、特許庁が審査をした結果、2003年4月25日に登録され、5月27日には商標掲載公報に掲載され、商標権が正式に角川に発生した。

 角川が「NPO」を商標登録したことで、「NPO」という語を題号にした雑誌や新聞を発行すると商標権侵害に当たる可能性が出てきた。これに対して、NPO側は、NPO活動の根幹にある定期刊行物の題号に「NPO」の語を使うことが制限される可能性のある商標登録であると反発し、また、新聞などマスコミでも「角川NPO商標登録問題」として大きく報道された。

 商標法では、商標登録から2ヶ月以内なら、誰もが特許庁に対して異議が申し立てられるとされている。そこで、「NPO」商標登録について、大阪NPOセンター、大阪ボランティア協会、関西国際交流団体協議会、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会、市民活動情報センター、日本NPOセンターの6団体は、異議申立をおこなう準備を進めてきた。

 7月24日に6団体によって特許庁に提出された異議申立書では、商標法にある審査基準に照らして、商標の基本である識別性の欠如、NPO活動の根幹にある定期刊行物の題号に「NPO」の語を使うことが制限されることから生じる公益への悪影響などを根拠に、雑誌・新聞の商標として「NPO」が商標登録されたことに異議を申し立てている。

 なお、角川は「NPO」と同時に「ボランティア」も雑誌・新聞の分野で商標登録をしており、それに対しては、同日、大阪ボランティア協会、静岡県ボランティア協会、とちぎボランティアネットワーク、日本NPOセンター、日本ボランティアコーディネーター協会、富士福祉事業団が特許庁に対して異議申立をおこなった。

 7月24日の「NPO」商標登録についての異議申立書提出後、6団体がNPO関係者などに発信した報告は下記のとおり。

2003年7月25日

■「NPO」の商標登録に対する異議申立書の提出と今後の対応について

特定非営利活動法人大阪NPOセンター事務局長 山田裕子
社会福祉法人大阪ボランティア協会事務局長 早瀬 昇
特定非営利活動法人関西国際交流団体協議会事務局長 有田典代
シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長 松原 明
特定非営利活動法人市民活動情報センター代表理事 今瀬政司
特定非営利活動法人日本NPOセンター常務理事 山岡義典

(五十音順)
上記代理人 弁護士 三木秀夫

 「NPO」の商標登録問題に関して、7/25(金)に、特許庁に対して、下記のとおり、異議申立書(別添)を提出いたしました。

◇申立人:NPO6団体 (五十音順)

 特定非営利活動法人 大阪NPOセンター
 社会福祉法人 大阪ボランティア協会
 特定非営利活動法人 関西国際交流団体協議会
 シーズ=市民活動を支える制度をつくる会
 特定非営利活動法人 市民活動情報センター
 特定非営利活動法人 日本NPOセンター

◇代理人:弁理士・弁護士4名

 山本俊則弁理士
 三木秀夫弁護士
 平野和宏弁護士・弁理士
 那須智美弁護士

◇異議申立書:別添

 7/4付の「「NPO」の商標登録異議申立のための証拠収集へのご協力のお願い」におきましては、多くの方々、団体から、多大なるご協力を頂いておりまして、誠にありがとうございます。(当証拠収集に関しましては、7月31日を期限としてお願いしておりましたが、その期限後でも追加ご協力をいただける場合には、できる限りお願いしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い致します。)

 今後は、8月27日の補充期限までの30日間において、異議申立書の異議理由補充およびその証拠の追加収集などの内容充実を図って行く予定です。

 それに際しまして、6月3日付の「角川書店による「NPO」の商標登録についての緊急のお知らせ」にご支援、ご賛同意見を頂いた方々、ならびに当NPO商標登録問題にご関心のある多くの方々に、正式な形で異議申立のご賛同を頂きたいと考えております。近くあらためてそのご賛同をお願いする呼びかけをさせて頂くように、現在準備を進めておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 なお、「NPO」の商標登録異議申立と並行して、大阪ボランティア協会などの諸団体が「ボランティア」の商標登録異議申立もしておりますので、そちらの方でのご支援、ご協力もよろしくお願い申し上げます。

商標登録異議申立書

平成15年7月25日

(11,000円)

 特許庁長官    殿

1 登録異議の申立てに係る商標登録の表示

 商標登録第4665822号
 指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分
 第16類
 雑誌,新聞

2 商標登録異議申立人

 住所(居所) 〒100-0005
 東京都千代田区丸の内2-6-1 古河ビル616
 電話番号 (03)5220-3911
 氏名(名称) 特定非営利活動法人日本NPOセンター

 住所(居所) 〒553-0006
 大阪府大阪市福島区吉野4-29-20
 大阪NPOプラザ201号
 電話番号 (06)6460-0268
 氏名(名称) 特定非営利活動法人大阪NPOセンター

 住所(居所) 〒530-0035
 大阪府大阪市北区同心1丁目5番27号
 電話番号 (06)6357-5741
 氏名(名称) 社会福祉法人大阪ボランティア協会

 住所(居所) 〒543-0001
 大阪府大阪市天王寺区上本町8丁目2番6号
 大阪国際交流センター2階
 電話番号 (06)6773-0256
 氏名(名称) 特定非営利活動法人関西国際交流団体協議会

 住所(居所) 〒552-0021
 大阪府大阪市港区築港2丁目8番24号
 piaNPO506号
 電話番号 (06)4395-1144
 氏名(名称) 特定非営利活動法人市民活動情報センター

 住所(居所) 〒162-0825
 東京都新宿区神楽坂2-22 かつ田ビル3F
 シーズ=市民活動を支える制度をつくる会内
 電話番号 (03)5227-2008
 氏名(名称) 事務局長 松原 明

3 代理人

 住所(居所) 〒530-0047
 大阪府大阪市北区西天満4丁目4番12号
 近藤ビル810
 新技術特許事務所
 電話番号 (06)6367-8111
 ファクシミリ番号 (06)6367-8122
 氏名 弁理士(11450) 山本 俊則

 住所(居所) 〒530-0047
 大阪府大阪市北区西天満4丁目4番12号
 近藤ビル510
 三木秀夫法律事務所
 電話番号 (06)6361-7557
 ファクシミリ番号 (06)6361-7606
 氏名(名所) 弁護士 三木 秀夫

 住所(居所) 〒530-0005
 大阪府大阪市北区中之島2丁目2番2号
 ニチメンビル2階
 平野和宏法律特許事務所
 電話番号  (06)6233-1487
 ファクシミリ番号 (06)6233-1488
 氏名(名称) 弁護士・弁理士(10407) 平野 和宏

 住所(居所) 〒530-0047
 大阪府大阪市北区西天満4丁目4番12号
 近藤ビル510
 三木秀夫法律事務所
 電話番号 (06)6361-7557
 ファクシミリ番号 (06)6361-7606
 氏名(名称) 弁護士 那須 智美

4 申立ての理由

(1)申立ての理由の要約

  1.  第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号

     「NPO」に関しては、雑誌,新聞等に記事が頻繁に掲載されており、法律が制定されるなど、社会的な関心が非常に高く、「NPO」は公共の財産となった言葉である。また、全国各地の特定非営利活動法人等により、題号に「NPO」なる文字を含む各種の雑誌,新聞等が発行されている。

     したがって、ローマ文字の3文字「NPO」のみを標準文字で横書きしてなる本件登録第4665822号商標(以下、「本件登録商標」という。)は、指定商品「雑誌、新聞」に使用しても商品の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本件登録商標は、該商品以外に使用するときは品質の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当する。

  2.  第3条第1項第6号

     仮に、雑誌,新聞の題号には識別力があり本件登録商標は第3条第1項第3号に該当しないと扱うとしても、「NPO」に関しては社会的な関心が高く公共の財産として定着しているので、本件登録商標は、現元号「平成」と同様に、第3条第1項第6号に該当する。

  3.  第3条第1項第4号

     「株式会社」、「K.K.」、「Co.」と同様に「ありふれた名称」である「NPO」を、標準文字により普通に用いられる方法で表示する本件登録商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。

  4.  第4条第1項第6号

     NPOは特定非営利活動法人の著名な略称であるので、本件登録商標は商標法第4条第1項第6号に該当する。

  5.  第4条第1項第7号

     本件登録商標の登録を認めると、商標権によって自由な社会貢献活動が制約されかねないという不条理な結果を招く上、社会貢献活動に便乗して利益を得る剽窃的な行為を国家の法制のもとに保護することにもなり、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するので、判例に照らしてみても、本件登録商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

  6.  第4条第1項第15号

     全国各地の特定非営利活動法人等の非営利組織は題号に「NPO」の文字を含む雑誌,新聞等を発行しているので、「NPO」のみを標準文字で横書きしてなる本件登録商標を雑誌、新聞に使用すると、非営利組織が発行又は販売している雑誌、新聞、あるいは非営利組織と経済的又は組織的に何等かの関係がある者が発行又は販売している雑誌、新聞と誤認し、需要者が出所について混同するおそれがあるので、本件登録商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

(2)手続の経緯

 出願 平成14年1月18日
 登録日 平成15年4月25日
 公報発行日 平成15年5月27日
 (商標登録第4665822号公報)

(3)申立ての根拠

 本件登録商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第3条第1項第4号、同法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第6号、同法第4条第1項第7号、同法第4条第1項第15号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、本件登録商標登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

(4)具体的理由

  1.  本件登録商標について

     本件登録商標は、ローマ文字の3文字「NPO」を標準文字のみによって横書きしてなり、第16類「雑誌,新聞」を指定商品として、平成14年1月18日登録出願、平成15年4月25日設定登録されたものである。

     本件登録商標からは、「エヌ・ピー・オー」の称呼が生じ、「NPO」は「非営利組織(nonprofit organization)」の略称であり、本件登録商標からは「非営利組織」等の観念が生じるものである。このことは、本件登録商標の審査経過において、商標権者自身が認めるところでもある。

  2.  証拠について

     詳細は、追って補充します。

  3.  第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号について

     証拠に示したように、「NPO」に関しては、雑誌、新聞に多数の記事が掲載されており、大学入試問題にも出題されており、法律が制定されるなど、社会的な関心が非常に高く、「NPO」は公共の財産となった言葉である。また、証拠に示したように、全国各地の特定非営利活動法人等により、題号に「NPO」なる文字を含む各種の雑誌、新聞等が発行されている。

     このような取引界の実情に鑑みれば、「NPO」の1語のみを標準文字により普通の態様で構成した本件登録商標は、本件登録商標をその指定商品「雑誌、新聞」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質(NPOに関する内容を含む)を表示したものと認識するに止まるから、該文字は自他識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり、かつ、NPOに関する内容を全く含まない場合には、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。

     なお、第3条第1項第3号の審査においては、「新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」と運用されているが、これは、将来、題号として使用されたならば、商標として識別力を発揮し得ることを前提としているものと解される。そうとするならば、NPOに関しては、前記したように、社会的な関心が非常に高く、公共の財産として定着しているので、たとえ雑誌、新聞の題号として使用しても、将来的に識別力を発揮し得ない。したがって、本件登録商標については、第3条第1項第3号の審査における運用の例外として扱うべきである。

  4.  第3条第1項第6号について

     仮に、第3条第1項第3号の審査における運用を原則通りとしても、前記した取引界の実情から明らかなように、「NPO」はきわめて社会性、公共性の高い言葉であるので、現元号をあらわす「平成」の文字が「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に該当するのと同様に、本件登録商標は「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標である」に該当する。

     すなわち、本件登録商標は、表示態様が標準文字によるものであり、しかも、「NPO」の1語のみからなるところ、「NPO」は、「非営利組織(nonprofit organization)」の略称であり、「非営利組織」の観念が生じるものである。このことは、本件登録商標の審査経過において、商標権者自身が認めるところでもある。さらに、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)により設立された特定非営利活動法人を、「NPO法人」あるいは単に「NPO」と言うことが一般的になっている。

     ところで、審査基準において、現元号を表す「平成」の文字が商標法第3条第1項第6号に該当するとされていることからも明らかなとおり、商標法第3条第1項第6号にいう「識別力」は、それ自体に公益性の概念を深く内包するものであり、公益上、特定人に独占させることが不適当と認められる商標も、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるというべきである。

     しかるところ、特定非営利活動促進法により設立された特定非営利活動法人等の非営利組織が、「NPO」なる文字標章を含んだ標章を題号として付して、継続・反復して定期刊行物を頒布することは広くおこなわれており、「非営利組織」の略称であり、「非営利組織」の観念が生じる本件登録商標について、特定人による独占を許せば、特定非営利活動法人等の非営利組織の活動を著しく阻害し、ひいては公益に反する結果を招くこととなる。

     したがって、本件登録商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

  5.  第3条第1項第4号について

     「ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は第3条第1項第4号に該当し、「ありふれた氏」に「株式会社」、「K.K.」、「Co.」等を結合してなる商標は、原則とし、第3条第1項第4号でいう「ありふれた名称」に該当するので、付加的な要素である「株式会社」、「K.K.」、「Co.」等は、それ自体が第3条第1項第4号でいう「ありふれた名称」に該当すると解される。

     そうとすれば、証拠から明らかなように、「NPO」は「特定非営利活動法人」の略称として著名であるので、標準文字で「NPO」と横書きしてなる本件登録商標は、「株式会社」、「K.K.」、「Co.」等と同様に、第3条第1項第4号でいう「ありふれた名称」に該当する。

  6.  第4条第1項第6号について

     「特定非営利活動法人」は、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第1条及び第2条に規定されているように、公益に関する団体であって営利を目的としないものであり、証拠から明らかなように、「特定非営利活動法人」の略称として「NPO」は著名である。著名なものであれば略称等も第4条第1項第6号に該当すると解されているので、本件登録商標は第4条第1項第6号に該当する。

     なお、特定の団体などを指す言葉でないので第4条第1項第6号に該当しないという見解もあり得るかもしれないが、特許庁の審査基準には、第4条第1項第6号を特定の団体に限り適用する旨は記載されておらず、そもそも法律上の明文規定もない。なお、商標法第4条第1項第6号の例外を定めた商標法第4条第2項から逆推して、原則を定めた商標法第4条第1項第6号を限定的に解釈することは本末転倒であり、妥当性に欠ける。

  7.  第4条第1項第7号について

    1)本件登録商標に係る権利者以外は、本件登録商標と同一又は類似の商標を指定商品「雑誌,新聞」と同一又は類似の商品・役務に使用することが禁止される。そのため、本来は、特定非営利活動促進法第1条に規定されているように「市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与する」べきであるのに、本件登録商標の存在により、NPOに関する雑誌,新聞の発行などの活動が制約を受けざるを得ないという不条理な結果を招く。

     それだけにとどまらず、本件登録商標は、前述したように既に公共の財産として定着した言葉「NPO」を、雑誌、新聞の題号に最も単純でありふれた態様で独占・排他的に使用することを権利者のみに認めるものであるので、その登録を許すとすれば、市民が行う自由な社会貢献活動に便乗して利益を得る剽窃的な行為を、商標法という国家の法律のもとに保護する結果となり、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する。

    2)この点、商標法4条1項7号(公序良俗違反)に関する下記の判例に照らしてみても、本件登録商標は第4条第1項第7号に該当すると判断すべきである。

    ア いわゆる「母衣旗事件」について
    (平成11年11月29日東京高裁判決・平成10年(行ケ)第18号判例時報1710号141頁)

    1.  本判決は、「母衣旗」の漢字と「ほろはた」の平仮名文字からなる登録商標が商標法4条1項7号の公序良俗を害するおそれがあるとして、特許庁の審決が取り消された事例である。

       上記判決の事案は、原告(福島県石川町)が、同地の伝承に係る「母衣旗」の名称を公共的な刊行物に使用し、いわゆる町おこしの一つとして、町の産品に共通の標章を付すことを奨励してその知名度を向上させる方策を実行し、これにより地域周辺の業者等において、誰もが自己の商品に「母衣旗」の標章を使用できるとの認識を有する状態となっていたところ、被告が、このことを十分承知していたにもかかわらず、本件商標の登録出願をし、設定登録を受け、指定商品の範囲とはいえ「母衣旗」の標章の独占的使用権限を取得して他者の使用を不可能又は困難としたものである。

    2.  この件につき、本件東京高裁判決は、「被告による本件商標の取得は、原告による、町の経済の振興を図るという地方公共団体としての政策目的に基づく公益的な施策に便乗して、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、指定商品が限定されるとはいえ、該施策の中心に位置付けられている『母衣旗』名称による利益の独占を図る意図でしたものといわざるを得ず、本件商標は公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものというべきである。」と判断したものである。
    3.  この判示は、次に述べるような、「NPO」という言葉の普及経過に照らしてみれば、まさに重要な部分で一致するものである。
    4.  「NPO」という言葉の普及について述べるならば、次のとおりである。かつては、「非営利の民間活動」にはあまり目が向けられず、一部の熱心な篤志家や宗教団体などの努力という例外が見られるのを除いては、全体としては自由に発達する余地の極めて乏しい状況が長く続いた。しかし、このような図式は、70年代くらいから次第に変化の兆を見せ始め、市民による新しい形態での活動が注目を集めるようになってきた。それは、福祉、教育、まちづくり、文化芸術、環境、人権問題、国際交流・国際協力、女性の地位、消費者問題など、多くの分野にわたって、行政や企業とも対等もしくは協働でするような幅の広い活動が行われるようになってきたためである。これは、経済が安定成長の時代になり、市民のニーズが多元化してきたこと、それに伴って行政が市民に提供できるサービスの限界が明らかになってきたこと、企業も市民社会の一員としての役割を担わなければ消費者の支持が得られなくなってきたこと、中高年齢者から若年層にいたるまで男女を問わず、自己実現の場をNPOに求め始めたなどのいろいろな要因があると言われている。そこには新しい時代に向けての、市民活動に対するニーズが生じてきたことも背景にあると言われていた。このような、市民の中から生まれてきた自発的な活動を、一般に「市民公益活動」と呼ばれるようになり、その担い手たる非営利組織(NPO)が、次第に社会において重要な役割を担うようになり、それに合わせて「NPO」という言葉も次第に普及していった。

       このように、NPOの重要性が増しつつある一方で、それに対応する社会制度の不備が浮かび上がってきた。特にNPOの法人化の容易化を求める声の高まりがあげられ、これと併せて、非営利の市民団体の活動を維持するために必要となる収益活動や寄付について、法人税への優遇措置や寄付者の寄付控除制度なども強く望まれるところとなった。これがNPO法制定の背景となっていった。

       この問題については、昭和60年に総務庁が「公益法人の指導監督に関する行政監察結果にもとづく勧告」で、法務省に対し、非営利団体に対する法人格付与の検討を勧告し、法務省はこれを受けて、中間法人制度創設に向けた基礎調査を開始していた。これを受けて、平成4年には、総務庁が再び「公益法人制度の整備についての勧告」を出し、また、平成6年には、経済企画庁国民生活審議会において「市民意識と社会参加活動委員会報告」が出され、その中でアメリカのNPO制度に触れ、日本における導入の必要性が提言された。そして、厚生省・通産省・環境庁・外務省などの省庁においても、NPO法の研究が始まった。さらに、在日米国大使館メンバーにより日本でのNPO制度改善に関する「大磯レポート」(平成6年12月)も発表された。

       このような背景の中で、NPOの社会における重要性などの議論が全国的に沸き起こり、市民団体の間でもNPOの活動を促進するためにはどうすべきかといった議論が進められた。平成4年に開催された日本ネットワーカーズ会議が“NPO”をテーマに開催されたのが初期の段階と解され、その翌年の平成5年3月には、大阪大学の「NPO研究フォーラム」が、同年9月には「NPO推進フォーラム」(現、NPOサポートセンター)が設立され、東京ランポや自由人権協会なども研究会を設けた。さらに、総合研究開発機構(NIRA)の委託を受けた研究グループが市民公益活動に関する現在状況等に対する調査を行い、平成6年3月に「市民公益活動基盤整備に関する調査研究」として発表された。その中で、市民公益活動団体に対する制度的支援を図ることが提言され、「民間公益活動基本法」等の提言がなされた。その後、NPO研究フォーラムも立法提案をまとめ、さらに平成6年11月には市民団体によって「シーズ=市民活動を支える制度をつくる会」も結成され、次第に活発な議論が高まっていった。

       この問題に対しては、平成6年の日本新党における同年度の重点施策の中で、「市民自身が市民の手で独創的な市民活動をすすめていけるよう、寄付金税制の抜本的見直しを図る」旨の提言がなされ、一時、政府与党政策の一部として組み込まれるに至った。その頃、社会党においても、「NPO法人化の際の認可基準緩和化」に向けた予算化を方針として表明し、さらに平成6年7月の自社さきがけによる連立政権の樹立を受けた後、同年10月からは、新党さきがけもこの問題の研究を開始した。また同年12月結党の新進党も、NPO問題を最優先課題に組み入れ、次第に議員立法化に向けた動きが始まるなど、次第に全ての政党においてNPO支援の問題が議論されるようになった。

       そして、平成7年1月の阪神淡路大震災において、ボランティア活動による貢献が大きくクローズアップされた。これを踏まえて、1.ボランティアが活動しやすい環境づくり、2.活動のための寄付金制度の改善、3.法人格付与のための制度確立の必要などの声が大きくなり、各政党・政府・中央官庁などもこの問題に取組み始め、通称「NPO法」の立法化が急に進み始めた。この動きを受けて、平成7年2月には経済企画庁を事務局とした18省庁連絡会議が設置され、さらには、2月中旬に与党NPOプロジェクトチームも検討を開始し、各政党もNPO法案の立法議論を行った。こういった政府・政党の動きと並行して、市民の側でも4月15日には市民活動の制度に関する連絡会も設置され、市民の間からの動きも活発になっていった。その後のNPOや全政党等の活発な議論並びにその報道を通じての国民的議論を通じて、翌平成8年12月16日に「市民活動促進法案」(「NPO法案」と呼ばれた)を衆議院に提出するに至った。そのような動きの中、平成8年11月には大阪NPOセンターと日本NPOセンターが設立され、その後、全国各地に多数のNPO支援センターが設立され、そこからの活動も活発となっていった。

       平成9年においては、市民団体側も各地で各党との意見交換会の場を積極的に開催して、その意見を表明しつつ法案の修正を求めていき、大阪と東京での公聴会を経たうえで、ついに、市民活動促進法案(通称NPO法案)が6月5日の衆院内閣委員会で賛成多数で可決、翌6日には衆議院本会議(第140回国会)で賛成多数で可決、参議院では平成10年の第142回国会において、名称を「特定非営利活動促進法」に変更するなどの一定の修正がなされた後、同年3月4日に本会議において賛成多数で可決、衆議院の再議に付され、3月19日の衆院本会議にて全会一致で可決成立、ようやく平成10年12月1日から施行されるに至った。

       また、NPO法が議員立法であったことなどから、平成11年8月5日には、衆参両院議員において、「NPO議員連盟」が設立され、同議員連盟は、自民党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、社民党、参議院の会の5党1会派から構成された。(共産党は、自民党の反対で参加せず。設立時の議員連盟に参加した国会議員は204名。)

       この間、マスコミ等の報道を通じて、市民・国民の間においては、「NPO」という言葉が広く普及していったものである。

       今では、内閣府および全国の都道府県において特定非営利活動法人(通称NPO法人)の認証業務を行い、その認証法人数は、平成13年10月には5,000件、平成15年2月には1万件を超え、平成15年6月末時点では1万1,899件に達している。

       そして、政府や全国の都道府県、そして多くの市町村においても、NPO支援のための担当部署を設けている。例えば、内閣府では国民生活局市民活動促進課内に「NPO室」を設けているほか、経済産業省関東経済産業局では、「コミュニティビジネス・NPO活動推進室」を設置している。また、宮城県では「NPO活動促進室」、群馬県では「NPO・ボランティア室」、埼玉県では「NPO活動推進室」、千葉県では「NPO活動推進課」、長野県では「生活環境部NPO活動推進室」、静岡県では「生活文化部・NPO推進室」、岐阜県では「県民政策室NPO・生涯学習支援グループ」、三重県では「生活部NPOチーム」、滋賀県では「県民文化課NPO活動促進室」、大阪府では「府民活動推進課NPOグループ」、兵庫県では「参画協働課NPO法人係」、和歌山県では「県民生活課NPO推進室」、島根県では「環境生活総務課NPO活動推進室」、高知県では「男女共同参画・NPO課」、長崎県では「県民生活課NPO・ボランティア支援班」などといった「NPO」の言葉を入れた名称の表示を使用している(ちなみに北海道では平成15年6月までNPO・地域活動係)。さらに、各自治体等では公設のNPO支援センター等を公設してその支援を積極的に行うなど、各種政策においても、いまやNPOを抜きにしては公共政策が語れないほどに、その重要性を増しているものである。そして、その各行政においても、さまざまな形でNPO関連の情報発信を行っている。

       また、政府においてもNPO支援の各種提言がなされている。一例を挙げれば、平成13年6月に、政府の「産業構造改革・雇用対策本部」における検討課題において、「新たな経済主体(NPO)の育成」という項目が設けられ、「経済社会におけるNPOの役割とその発展がもたらす影響を具体的に分析し、健全な発展に向けた課題と解決策について提言する」ことが決定された。この決定を受け、平成13年8月、経済産業省の産業構造審議会にNPO部会が設置され、同部会において審議の上で、平成14年5月14日に「『新しい公益』の実現に向けて」という中間とりまとめが発表された。そこでは「新しい公益を担うNPO」とか、「新たな経済主体としてのNPO」という表現でNPOをとらえ、「個人が経済社会の問題解決に向けて具体的な行動を起こそうとする場合、新たな組織形態としてNPOが注目される。現在、日本の経済社会は循環的にも構造的にも厳しい状況にあるが、今後、経済社会を活力あるものにしていく上でNPOは重要な役割を果たすものと考えられる。」(中間とりまとめ70ページ、「本報告書の狙い」から)としている。

       また、NPOを対象とした学術研究も極めて活発に行われており、平成10年7月には日本NPO学会が設立され、平成11年3月には第1回大会が開催され、研究者のみならず、NPO・行政・企業の社会貢献室などさまざまな分野から1000人以上もの加入者を擁して、極めて活発な研究発表が行われている。その他、大学・大学院その他の研究機関においてはNPOを研究テーマにする部門が急激に増加し、それを学ぶ学生数も極めて急激に増えつつある。

       そして、NPOを題号とする書籍その他の刊行物は、現時点においては極めて多数に及んでいる。国会図書館のデーターベースにおいて、NPOをキーワードにして検索を行えば235件が検出される。また、雑誌新聞その他これに類似する定期刊行物において、NPOを中心テーマに据えるものは数え切れないくらいに存在し、そのうち「NPO」を題号に含むものも多数に至っている。

    5.  そもそも、「NPO」という言葉がいつから広く使われるようになったのであろうか。

       この点について、経済企画庁が出した平成12年版国民生活白書(副題「ボランティアが深める好縁」)によると、各全国紙で「NPO」に関する言葉がどの程度頻繁に登場したかのデーターが報告されている(237ページ)。それによると、「NPO」が初めて日経新聞に載ったのは昭和60年(1985年)であり、その後、昭和61年5件、昭和62年10件、昭和63年8件、平成元年25件、平成2年18件、平成3年15件、平成4年24件、平成5年19件、平成6年39件、平成7年80件、平成8年139件、平成9年262件、平成10年335件、平成11年685件、平成12年624件と極めて急激に増えており、NGOや市民社会、ボランティア、フィランソロピーといったNPO関連用語を入れると、極めて多くの登載数になっている。

       さらに、同白書によると、読売新聞では、昭和63年1件、平成元年1件、平成2年1件、平成3年4件、平成4年9件、平成5年6件、平成6年10件、平成7年37件、平成8年72件、平成9年83件、平成10年145件、平成11年603件、平成12年846件となっている。

       また、同じく毎日新聞では、平成3年1件、平成4年4件、平成5年3件、平成6年6件、平成7年35件、平成8年104件、平成9年172件、平成10年428件、平成11年831件、平成12年884件となっている。

       また、同じく産経新聞では、平成4年1件、平成5年5件、平成6年10件、平成7年16件、平成8年33件、平成9年28件、平成10年40件、平成11年107件、平成12年121件となっている。

       この白書には、朝日新聞のデーターが載っていないが、同紙の記事データーベースで検索をすると、昭和62年3件、昭和63年1件、平成元年2件、平成2年3件、平成3年0件、平成4年3件、平成5年1件、平成6年10件、平成7年78件、平成8年163件、平成9年256件、平成10年509件、平成11年929件、平成12年1387件、平成13年2520件、平成14年3599件であった。また、読売新聞記事データーベースによる平成13年以降のデーターによれば、平成13年2230件、平成14年3107件である。このように、実に連日のように、しかも今や1日のうちに何回もの記事で「NPO」という語が登場しているといっても過言ではない。

    6.  このような中、平成15年1月に行われた大学入試センター試験においても、「公民」の「政治・経済」と「現代社会」において、NPOに関する問題が出題されるなど、ひろく学校教育の分野においても広く知れ渡るに至っている。1月19日(日)に行われた大学入試センター試験「公民」の「政治・経済」と「現代社会」で NPOに関する問題が出題された。

       出題は「政治・経済」第3問の問4と、「現代社会」第6問の問7で、内容と大学入試センター発表の正解は、下記の通りであった。

      ■政治・経済

      第3問 次の文章を読み、下の問い(問1~5)に答えよ。

       現代社会では、国家と個人の間でさまざまな集団が多元的な活動を展開し、国民の政治参加も、個人よりも集団を通して行われるようになった。 <中略>
       他方、現在では、(d)NPO(非営利組織)や市民運動、消費者団体など、必ずしも職業や階層に基礎を置かない集団の活動が社会的重要性を増し、国家の側でもこうした自発的な集団の活動を支援しようとする動きが出ている。
       国民の政治参加は民主政治の要であるが、NPOなどの新しいタイプの集団が、今後、いかなる意義を担うことになるのかは、注目に値する課題である。

      問4 下線部(d)NPO(非営利組織)に関連して、日本におけるNPOやボランティア活動についての記述として誤っているものを次の1~4のうち一つ選べ。

      1. NPO法(特定非営利活動促進法)が制定され、NPOによる法人格取得が容易となった。
      2. NPOはボランティアを基礎としているので、有給の職員を雇うことは禁じられている。
      3. NPOは知事の指定を受けて、介護保険法に基づく在宅介護サービスを提供することができる。
      4. 阪神・淡路大震災はボランティア活動の重要性を認識させる大きな出来事となった。

      (大学入試センター発表の正解:2)

      ■現代社会

      第6問 次の文章を読み、下の問い(問1~7)に答えよ。

      <前半略> パーク・アンド・ライドの特徴は、自家用車よりも公共交通機関の利用の方が有利になるような条件を設定して、人々の行動を環境に負荷をかけない方向に誘導する点にある。一方では乗り入れ制限や車線規制等、自家用車に不利に働く政策を打ち出し、他方では路線の充実や料金の割引、専用レーンの設置等により公共交通の利用者を優遇することで、公共交通機関の利用を進めようとするのである。
       こうした政策を成功させる上では、(g)その地域に生活している住民の合意や参加が欠かせない。自家用車の利用者に不便を強いるパーク・アンド・ライドの場合、なぜこういった政策を実施するのか、利用者に納得してもらうことが必要である。また、効果的な実施方法を立案するには、行政が地域住民と協力して実験的なパーク・アンド・ライドを行うことも重要である。<以下略>

      問7 下線部(g)その地域に生活している住民の合意や参加に関連して、地域社会における住民の合意や参加についての記述として適当でないものを、次の1~4のうち一つ選べ。

      1. 地域住民がNPO(非営利組織)を作って、行政とは独自に社会的サービスを提供したり、政策を立案したりするようになった。
      2. NPOは公共性が高いので、NPO法(特定非営利活動促進法)は、NPOの代表者は監督官庁の資格審査に合格する必要があると規定している。
      3. 情報公開とは、広報などによって行政機関が情報を提供するだけでなく、住民が知りたい情報を、行政機関に請求することのできる制度を指す。
      4. 住民は有権者の署名を一定数集めることで、条例の制定・改廃や首長の解職を請求することができる。

      (大学入試センター発表の正解:2)

    7.  このような動きの中、市民・国民の誰もが「NPO」という言葉を知るようになり、NPO関連の印刷物が極めて大量に流通したほか、「NPO」を論じる機関紙・雑誌・新聞その他定期刊行物に関しても、「NPO」の文字を含む題号を使用したものが多数出現していたものである。つまり、NPOが公共分野の新しい担い手であるという観念から、その用語は極めて公共性の強い言葉として、関係する人々はもちろん広く一般市民・企業・行政が理解するようになったものである。

       今回の商標登録出願において、出願者は近い将来においてこの分野での雑誌等を発行しようと考えていたということであるから、およそこのような経緯を十分承知していたものと推認される。それにもかかわらず、本件登録商標の登録出願をして登録を受けて、指定商品の範囲とはいえ、「NPO」の標章の独占的使用権限を取得し、他の者の使用を不可能又は困難としたものである。上記東京高裁判決の表現を借りて言えば、「商標権者による本件登録商標の取得は、現代社会におけるNPOの公益的・公共的用語の普及に便乗して、NPOなどによる言論活動その他の活動を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知り、または知り得ながら、『NPO』名称による利益の独占を図る意図でしたものといわざるを得ず、本件登録商標は公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するもの」、と言うべきである。

    イ いわゆる「企業市民白書」事件について
    (平成12年5月8日東京高裁判決・平成11(行ケ)394号審決取消請求事件)

    1.  本判決は、「企業市民白書」という商標(「印刷物、その他本類に属する商品」)につき、これを商標法4条1項7号に該当するとして、特許庁がした登録拒否を正当なものとした事案である。
    2.  その判断において、裁判所は、商標法の目的が、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」(同法1条)にあることに照らして、同法による商標の保護が、産業の健全な発達及び需要者の利益を損なうようなものであってはならず、同法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗」も、このような観点から解すべきであって、そうであれば、商標の使用が、社会の一般的倫理的観念に反するような場合や、それが直接に又は商取引の秩序を乱すことにより、社会公共の利益を害する場合においても、当該商標は同号に該当するものとして、登録を受けられないものと解さなければならない、と述べている。

       その上で、同判決は、「中央省庁の編集に係るもの以外の刊行物であって、題号中に『白書』の文字を含む刊行物の一部には、政府刊行物としての『白書』に対する一般国民の信頼性を損なうものがあり、本願商標をその指定商品に使用した場合には、当該商品もその類となるものであって、そのことの故に、1項7号に当たる」とし、この商標を使用した場合、「これに接する取引者、需要者は政府発行の刊行物であるかの如く誤認するおそれがあり、ひいては、商取引の秩序を乱し得るおそれがある」ことから1項7号に該当するとして拒絶した原査定は適正なものであると判示している。

    3.  この判決は、「企業市民白書」の商標登録を公序良俗違反としたものである。この判決での論理を前提に考えた場合、この判断過程で述べられた一般理論は、「NPO」という表題での雑誌新聞及びそれに類似する刊行物の現状のもとでは、重要な部分で本件において引用可能な部分が多いと言える。それを見れば、「企業市民白書」が許されず、「NPO」が何故許されるのか、が疑問と言うべきである。

       すなわち、前述のように、「NPO」の言葉は広く普及し、数多くのNPOがさまざまな発信媒体で情報発信を行っていて、市民・国民の間に広く頒布され、その受信者たる者は、その発信者がNPOであるとの認識が広まり定着している。このことからして、営利事業者が「NPO」を商標とする雑誌新聞を発行した場合、これに接する取引者、需要者はNPO発行の情報媒体であるかの如く誤認するおそれがあり、ひいては取引の秩序を乱し得るおそれがあると言えるものであるから、まさに1項7号に該当すると言うべきである。これについて、「白書」は中央省庁の編集にかかるものであるから同一に論じ得ないという見解もあり得るかもしれないが、それは行政庁のみを過大に保護するだけの論理であり相当ではない。およそ「NPO」といった公共的な表示であれば、同様の市民・国民の信頼と言う観点からの評価は同じであるべきである。

    ウ いわゆる「野外科学KJ法事件」について
    (平成14年7月16日東京高裁判決・平成14年(行ケ)第94号審決取消請求事件)

    1.  この判決は、「野外科学KJ法」なる商標登録に対し、「野外科学」及び「KJ法」に関する創案者である被告及びKJ法学会等の関係者並びにその利用者の利益を害し、剽窃的であって、社会の一般的道徳観念に反し、公の秩序を害するものであると認められるから、商標法4条1項7号に該当し、無効とすべきである、として、特許庁のした無効審決を正当としたものである。

       この判決の事案は、被告がKJ法を創案し、提唱した後、その研究と発展に努めたこと、また、被告が中心となってKJ法学会を設立して、野外科学のみならず、様々な分野においてKJ法の普及に努めてきたこと、及び、KJ法学会における多数の賛同者の協力と研究者の発表等を通じて、KJ法が様々な分野で利用され、普及していったこと等の事実を原告が知りながら、原告は第41類(電子計算機ソフトウェアの使用方法の教授)を指定役務として、「野外科学KJ法」を出願しその登録を得たものであった。

    2.  この件について、東京高裁は、「原告が本件商標を出願し、その登録を得ることは、原告が『野外科学KJ法』との語及びこれと類似する語をその指定役務について排他的に使用することができることを意味するのであるから、被告及びKJ法学会の関係者並びにその利用者が本件商標及びこれと類似する商標をその指定役務又はこれと類似する役務あるいは商品に使用することができなくなることを意味するものである。そして、『野外科学』やこれと類似する語は、被告及びKJ法学会の関係者等によって利用される見込みの大きい語ということができ、したがって、原告が本件商標を登録することは、これらの者の利益を害するものである」とし、その上で、本件において、原告が本件商標をその指定役務につき排他的に使用することが、「『野外科学』や『KJ法』との語を創案ないし提唱してきた被告、及び、これを被告とともに発展させてきたKJ法学会の関係者、並びに、その利用者の利益を害することになり、原告がKJ法学会に前記のとおり関係してきたものであることも考慮すると(KJ法の発展に一部貢献してきた点を考慮しても)、その行為は、その主観的動機はともかくとして、客観的にみれば、剽窃的であり、公序良俗に反する結果となる、と認めるものにすぎないのである」としている。

       その上で、同判決は、「商標法4条1項7号の『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には、1.商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字、図形、又は、当該商標を指定商品あるいは指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、あるいは、社会の一般道徳観念に反するような商標、2.特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標、3.特許法以外の法律によって、その使用等が禁止されている商標等が含まれる、と解すべきである(必ずしもこれらのものに限定するとの趣旨ではない。)」とし、「このような、社会の一般道徳観念に反するような場合には、本件のように、ある商標をその指定役務について登録し、これを排他的に使用することが、当該商標をなす用語等につき当該商標出願人よりもより密接な関係を有する者等の利益を害し、剽窃的行為である、と評することのできる場合も含まれ、このような商標を出願し登録する行為は、商標法4条1項7号に該当するというべきである」との一般論を述べた上で、「『野外科学』の語は被告が提唱した語であり、『KJ法』との語は、被告が創案して提唱し、その後、KJ法学会等で多数の賛同者及び研究者の協力を得て発展し、科学的分析方法として一般に普及し、広く認識されている語である。この『KJ法』と『野外科学』との語を組み合わせた本件商標を原告が商標登録をし、これを排他的に使用することは、被告及びKJ法学会の関係者とその利用者の利益を害し、剽窃的行為であると評することができることは前述のとおりであるから、原告が本件商標を出願し、その登録を受ける行為は、社会の一般道徳的観念に反し、公序良俗に反するものといわざるを得ない」と述べ、上記の結論に至ったものである。

    3.  この判決の事案は、本件「NPO」の問題においても、極めて近いものがあると考える。つまり、本件を上記判決の事案に照らして言えば、「NPO」の言葉や概念の創案者を特定しうるものではないが、この用語が日本にも導入されてきたのは、初期の段階としてはNPOのマクロ的な経済規模研究に端を発し、NPOの国際比較研究の一つとして米国のジョンズ・ホプキンス大学のレスター・サラモン教授らが中心となって行ってきた非営利セクターの国際比較研究プロジェクト(The Johns Hopkins Comparative Nonprofit Sector Project ;JHCNP)からである。現在、世界的にこの巨大プロジェクトに参加をしている国は30ヵ国(平成11年時点)近くになっている。90年代(平成2年以降)においては、その概念の流入を受け、JHCNPの日本研究チームの精力的な研究活動や、それに関わる研究者等がその研究を広げていった。また、NPOとして活動をしている多数の人々の熱い情熱と理念のもとで、この概念が市民にも急速に浸透し、平成10年のNPO法成立にも至り、その後もNPOセクターのみならず、企業・行政の各セクターの関係者からも、さまざまな角度でその概念と言葉の研究とその発展が続けられているものである。そして、その研究・発展において、最も重要になるのが、NPO研究に関する各種情報媒体であり、そこには「NPO」の語が極めて多様に使用され、その発展に寄与しているのである。そういう意味で、「NPO」の場合は、NPOに関心を有する極めて多数の人々が、共通の用語として「NPO」を使用し、その概念を意味付けしていったものであって、そういった人々こそが「創案者」と言え、また、その人々こそがこれを発展させ、普及に多大な貢献をしてきたものである。

       本件において、今回の「NPO」の商標登録者が本件登録商標をその指定商品につき排他的に使用することが、「NPO」の語を研究しその概念を提唱してきた多くの人々や、それを発展させてきたNPO関係者、NPO学会の関係者、並びに、それに関わる企業や行政の関係者、並びにその利用者となる市民・国民の利益を害することになり、商標登録者の行為は、その主観的動機はともかくとして、客観的にみれば、剽窃的であり、公序良俗に反する結果となると言わざるを得ないのである。

  8.  第4条第1項第15号について

     全国各地の特定非営利活動法人等の非営利組織が、題号に「NPO」なる文字を含む雑誌,新聞等を発行している。そのため、「NPO」なる文字のみを普通の態様で構成した本件登録商標を指定商品「雑誌,新聞」に使用した場合、非営利組織が発行又は販売している雑誌,新聞であると誤認し、あるいは、非営利組織と経済的又は組織的に何等かの関係がある者が発行又は販売している雑誌,新聞であると誤認し、雑誌,新聞の需要者が雑誌,新聞の出所について混同するおそれがあるので、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(5)むすび

 以上のように、本件登録商標に係る商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第3条第1項第4号、同法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第6号、同法第4条第1項第7号、同法第4条第1項第15号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、本件登録商標登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

5 証拠方法

 追って、補充します。

6 添付書類又は添付物件の目録

 (1) 登録異議申立書 副本 2通
 (2) 委任状 6通

以上

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