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2004年07月05日 10:00

行政 : 拠出型非営利法人の検討進む

 政府の公益法人制度改革に関する有識者会議(以下、「有識者会議」)とその下に設置された非営利法人ワーキング・グループ(以下、「非営利WG」)で、財産拠出型非営利法人といわれる法人類型の議論が進んでいる。7月15日に示される「青写真」で、この類型がどう扱われるかが注目される。

 

 有識者会議が3月31日に発表した「議論の中間整理」では、創設される「非営利法人(仮称)」は、「営利法人制度との区別を明確化するため、社団形態の非営利法人の社員の権利・義務の内容として、(1) 出資義務を負わない、(2) 利益(剰余金)分配請求権を有しない、(3) 残余財産分配請求権を有しない、(4) 法人財産に対する持分を有しないこととする(もっとも、定款で定めれば社員が出資する(財産の拠出をする)法人を設立することも可能であり、その場合の出資の意味については、上記の非営利性の原則(2)(3)(4)に抵触しないように、そのあり方を検討する。)」とされており、定款で定めれば出資、もしくは財産を拠出する法人(以下「拠出型非営利法人」)の設立を認める方向を明らかにしている。

 行革事務局は、「この法人類型を新たな非営利法人に含めることについては、中間整理にもはっきりと書いている」と話しており、他の原則と抵触しないように導入するにはどのようにすればいいか検討する、というのが基本的な立場となっている。

 政府はこのような前提に基づき、5月から非営利法人ワーキンググループ(以下「非営利WG」)が、6月に入ると有識者会議がそれぞれ、この「拠出型非営利法人」についての議論を開始している。ただ、この類型の法人の設立には慎重な意見もでており、今後の議論の行方に注目が集まっている。

 6月25日の非営利WGの資料によると、「拠出型非営利法人」とは、以下のようなもの。

  • この法人類型は、社員または第三者から、定款に定めることにより、金銭その他の財産の拠出を受けることができる。
  • 拠出金には利息を付することができない方向で検討。
  • 拠出者は、拠出額の限度でその返還を受けることができる。金銭以外の財産については、拠出時の当該財産の価格に相当する金銭を返還する。
  • 拠出金の返還は、定時社員総会の決議と毎事業年度末の貸借対照表に基づき剰余金として処分可能な額の範囲内で行われる。
  • 清算時に拠出金を返還する場合、その法人にほかの債務があるときは、その債務の弁済がなされた後でなければ、することができない。
  • 拠出金が返還される場合には、返還される拠出金に相当する金額が積み立てられるものとし、この積立金は、取り崩すことができない。
  • この類型の法人における「残余財産」とは、拠出金の返還を済ませた後に法人に残存する財産をいう。
  • この法人は、拠出額の総額や、拠出者の権利に関する規定、返還の手続きなどを登記する。

 このような類型の法人設立へのニーズについては、6月17日の有識者会議で、非営利WGの能見座長から、「近年、団塊の世代や主婦、高齢者層を中心として、地域で何かやりたいという思いが高まっているが、継続して事業を行うためには一定程度の財産的基盤を持つことが重要であり、そのために財産拠出型の非営利法人という制度が必要。また、地域で活動する団体の活動を応援したいという企業や個人が地域に存在しているが、現在は資金の受け皿として寄付しかない状況。実際に資金を提供する側の選択の幅を拡大するためにも、財産拠出型の非営利法人が必要。 」と説明されている。

 有識者会議の委員からも、「公益活動に対する資金提供者が少ない中で、元本を拠出者に戻すことが可能な仕組みというものができることに期待したい。寄付は一度出してしまったらそれまでだが、一定の期間は公益のためにお金を出そうという人はかなりいるだろう。こうした形の資金が公益事業に流れてくるということになれば、公益法人そのものの改革にもつながるのではないか。」などの肯定的な意見もだされている。

 しかし、拠出分を返還することについては、「残った財産の中には拠出者による拠出分、寄付者からの寄付分、税優遇等による蓄積分などが含まれており、残った財産がどれに当たるか区別するのは難しく、拠出された分を拠出者に戻すということが社会的に説明できるかどうかは留意する必要がある。」、「税優遇は国民広く一般からの補助金ともいうべき性格のもの。税優遇を受けつつ公益活動を行い、その点に配慮しないで残余財産を拠出者に戻すという制度は公平性に欠き、国民からの支持は得られないのではないか。そのような考え方があるのであれば、公益法人制度とは別のものとして考えるべきではないか。」、「出した分は戻してもよいとなれば、それは相続できるのかといった問題も生じてくる。そもそも、一旦出したものを戻すというのは潔くない。」などの意見、慎重論もだされている。

 財産拠出型非営利法人の創設に対しては、ワーカーズ・コレクティブや市民出資による風力発電事業、NPOバンクなどに取り組む市民から強い要望がだされていた。

 中間整理の経緯もあるので、拠出型非営利法人の導入はほぼ確実とみなされているが、有識者会議が15日から議論を開始する「青写真」のなかで、どのように、この類型が扱われるのかが注目を集めている。

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