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2006年02月16日 10:00

行政 : 「目的信託」でボランティア支援

 2月8日、法相の諮問機関である法制審議会(会長・鳥居淳子成城大教授)は、信託法の改正要綱を杉浦正健法相に答申した。この改正要綱には、災害被災者救済へのボランティア支援など、受益者の定めのない「目的信託」制度の創設が盛り込まれた。

 

 「信託」とは、委託者が、自分の財産の権利を信託銀行などの受託者に引渡し、受託者が指定された受益者のために財産を管理処分する契約。財産の運用、保護、公益目的の寄附に使われている。

 「信託」では、財産の所有権が受託者に移るため、機動的な財産処分ができる。信託の定義やルールは「信託法」で、信託事業者規制は「信託業法」で規定されている。

 この「信託法」が制定されたのは大正11年。制定後、現在まで実質的な改正がなされていなかったため、社会・経済活動の多様化や高度化に即した抜本的改正の必要性が生じていた。

 平成16年10月から、法相の諮問機関である法制審議会の信託法部会(部会長・能見善久東京大学教授)は、信託法の改正に関する議論を重ねてきた。

 同部会は1月20日に信託法改正要綱案をまとめ、2月8日の法制審議会総会で、杉浦正健法相に答申した。

 法務省は、この答申を受け、今国会中に法案を提出する予定。

 この改正要綱案では、「事業信託」、「自分信託(信託宣言)」、「目的信託」の3形態を認めることが盛り込まれた。

 「事業信託」では、信託の対象を負債まで広げることで、事業を丸ごと信託できるようになった。これによって、新製品の開発などリスクのある事業部門を信託して、受益権を投資家に売ることで資金調達ができるようになる。

 「自分信託(信託宣言)」では、自分が自分に信託することで信託銀行に委託していた業務を自前でできるため信託費用の削減になる。これにより、企業は自社に信託した受益権を投資家に販売して資金調達ができる。また、企業再生の過程で事業部門を一時的に自社に信託し、再生後に契約を解消して本体事業として復活する手法も可能になり、必要な許認可を失わずにすむことや雇用関係を継続させることができるというメリットも生まれる。

 NPOにとって期待がかかるのが「目的信託」。

 「目的信託」が創設されることで、「公益信託」でなくても、財産の大まかな活用方法を決め信託し、誰に渡すかは信託会社などの「受託者」に任せることができるようになる。これによって、個人の遺産処分などの選択肢が広がり、NPOにとっては、「自然災害被災者の救済ボランティア支援」などで設定された「目的信託」によって、信託の受益者となる道が広がる。

 現行法では、受益者を確定し得ないものは、「公益信託」のみが有効とされている。しかし、「公益信託」は、「慈善・学術・技芸・祭祀(さいし)・宗教などの公益を目的」とし、主務官庁が存立を許可するものに限られている。

 ただし、「目的信託」では、公益にとどまらず、「自分の死後に自宅を記念館として公開」「遺したペットの飼育」といった「目的」も認めるということから、財産隠しに悪用されることも懸念されている。

 そのため、金融庁は、「信託業法」を改正して歯止めをかけることを検討。金融審議会が、1月26日付で「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて」と題する報告書を出している。

 「信託法改正要綱」は、法務省サイト内、下記に掲載されている。

 http://www.moj.go.jp/SHINGI2/060208-2.html

 「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて」は、金融庁サイト内、下記に掲載されている。

 http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/siryou/kinyu/dai2/f-20060126.pdf

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