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2002年の報告

2007年08月29日 12:05

「シーズ・NPOマネジメントセミナー(東京)」報告

「企業・行政とは異なるNPOの活動戦略とは」
日本財団助成事業 報告会

 8月30日(金)午後7時より、シーズ主催のNPOマネジメントセミナー「企業・行政とは異なるNPOの活動戦略とは」が、東京ボランティア・市民活動センター学習室A・Bにて開催された。

 シーズでは、日本財団より助成を受け、NPOの事業について調査を実施してきた。このセミナーは、その調査結果の報告会として開催された。また、今回のセミナーは、先月開催したシーズ・マネジメントセミナーの続編にもあたる。前回より分かりやすい内容にするために、参加者に資料として調査報告書を配布し、調査した9事業をすべて紹介した。

 報告は、シーズ・事務局長の松原明と、今回の調査を担当した鮎川葉子が行った。松原が優れたNPOに共通する活動戦略を概観し、鮎川は個々の調査事例について報告した。

 参加者の事後アンケートでは、「事業を創出するためにニーズに着目し、そのニーズをどの様に団体のミッションとつなげるかを、複数のケースでとらえる視点が参考になりました。」などの感想が寄せられた。

 以下、セミナーの概要を報告する。


 NPOの事業は、行政や企業と異なる事業構造を備えている。

 行政や企業の事業が「製品(財・サービス)を提供し、対価を受け取る(行政の場合は、税金によって対価をまかなう)」という二者間の関係性であるのに対し、NPOの事業は、NPOの支援者、NPO、NPOの利用者という三者間の関係性から事業が作られている。

 この「三者の関係性」は、支援者からの資源(投資)をNPOが使って、利用者にサービス提供(事業)を行っていることと捉えられていることが多い。しかし、活動を発展させているNPOは、支援者と利用者のニーズをさまざまに結ぶ事業を開発することによって、事業を進める中でさらに新たな支援者や利用者を増やす仕組みを作っている。

 今回の調査では、このような、企業や行政とは異なったNPOの関係づくりに注目し、上手な活動戦略を作り上げている9つの団体の事業事例を調査・分析した。

 これらの事例の事業は、構造的に次の3つのタイプに分類できる。

  1. 支援者参加促進タイプ
  2. 利用者顕在化タイプ
  3. 事業ミックスタイプ

 以下、これらの事業タイプの特徴を、事例に基づき検討していく。


A.支援者参加促進タイプ

 支援者を一様な存在として捉えず、その問題に対する多様な支援者の興味や関心を引き出すような事業を組み立てる。事業を進めるに従って支援者が増えていくような事業戦略を持つタイプである。

 このタイプの事業では、支援者の関心・ニーズを分析して事業を開発しているのが特徴である。ニーズを製品化していく過程では、事業に対する様々な形での参加を引き出すことにポイントが置かれる。

1)HIVと人権情報センター

 「ヤング・シェアリング・プログラム(YSP)」事業

  1. 団体の目的:「AIDSとの共生」を社会的に実現する
  2. 事業の内容と特徴

     エイズについて関心の高い若者が、若者への啓発プログラムを実施する事業。エイズ予防を進めたい学校や行政に対してプログラムをコーディネートし、性教育や人権啓発の予算で事業を実施する。

  3. 支援者のニーズへの着眼点

     若者は、性やエイズに関する知識が乏しいまま性行為を持っているが、適切な情報提供が行われていない。学校は生徒に効果的に働きかける方法がわからず、保健所はエイズ予防を進めたくても、縦割り行政のため学校に受け入れられにくい。

2)京都フィルハーモニー室内合奏団

 「参加型チャリティコンサート」事業

  1. 団体の目的:音楽に親しむ市民を増やし、音楽文化の振興につなげる
  2. 事業の内容と特徴

     市民が参加するコンサートを、チャリティ活動を目的に実施する事業。コンサートにチャリティという意味を与え、多様な支援や協力を得ることを可能にする。参加が広がれば広がるほど、「音楽文化に親しむ機会」を増やすことができる。

  3. 支援者のニーズへの着眼点

     クラシックコンサートはよほど好きな人でなければ足を運ばないため、需要が少なく、音楽文化が広がりにくい。しかし、音楽にはあまり興味が無くても、チャリティ活動に関心がある人は多く、このようなイベントは企業や行政も協力しやすい。

3)サンクチュアリジャパン

 「ウミガメ調査と放流会」事業

  1. 団体の目的:遠州灘を中心に、海岸などの自然環境を開発から守る
  2. 事業の内容と特徴

     アカウミガメの産卵状況を調査し、孵化したコガメを海にかえす事業。行政から委託を受けて卵の保護と調査を行い、イベントとして放流会を行う。一連の活動にさまざまな参加ニーズを持つ市民を巻き込み、自然環境の価値の意味づけを行う。

  3. 支援者のニーズへの着眼点

     身近な自然の価値は、普段何気なく利用している人にはわかりにくいが、ウミガメという具体的なシンボルを見せることで、カメが好きな人、子どもにカメを見せたい人、自然や動物の保護をしたい人、開発を進めたい人などを事業に巻き込んでいる。

4)環境市民

 「環境首都コンテスト」事業

  1. 団体の目的:持続可能な社会を実現するための、市民意識の向上
  2. 事業の内容と特徴

     環境問題への取り組みを一定の基準で点数化し、基準を満たした自治体を日本の「環境首都」と認定し表彰する事業。「環境首都」という称号を与えて表彰することを重視し、コンテスト後のフォローによって環境問題への取り組みを推進する。

  3. 支援者のニーズへの着眼点

     環境問題に興味がある市民や活動に参加したい市民は多い。また環境施策を進める自治体は、他の自治体の取り組み状況を知りたい。さらに、地域で活動する市民団体は、環境施策の推進のために、自治体との協力関係を築きたいと思っている。

B.利用者顕在化タイプ

 サービスを必要としているが、サービスが存在しないために「利用者はいない」と考えられているニーズに焦点を当てる。事業を進めるに従って利用者の存在を社会に明らかにしていくような事業戦略を持つタイプである。

 このタイプは、「隠されているニーズ」「声を上げにくい利用者」を事業によって顕在化させ、利用者が多くいることをわかりやすく示すことで、企業や行政が事業に参入できるような最初の仕組みを作ることにポイントが置かれる。

5)ヒューマンケア協会

 「自立生活支援プログラム」事業

  1. 団体の目的:障害者が社会参加できるような社会基盤を作る
  2. 事業の内容と特徴

     自立生活への意思を高める講座、すでに自立生活をしている障害者からのピアカウンセリング、介助者を使って生活を組み立てる生活支援プログラム事業。自立生活ができるようになった障害者が次にはサポートする側にまわり、社会参加をさらに推進していく。

  3. 利用者のニーズへの着眼点

     行政には、障害者に、施設を出て地域で自立生活したいニーズがあるとは思っていなかった。そこで、障害者自身がサービスを提案し、必要な支援があれば利用して地域で自立して生活したい障害者は多いことを証明する事業を立案した。

6)かながわ・女のスペース“みずら“

 「緊急一時保護(シェルター)」事業

  1. 団体の目的:女性の人権を守るために具体的な問題解決を図る
  2. 事業の内容と特徴

     さまざまな事情で居所がなくなった女性が緊急的に避難できる緊急避難シェルターの運営事業。保護が必要な女性の存在を数量的に表現して、家庭内暴力に悩む女性のニーズを社会に対して顕在化させ、立法や制度化に結びつけることに成功した。

  3. 利用者のニーズへの着眼点

     家庭内の暴力は個人の問題で、社会が介入することは適当でないと考えられ、ニーズにあったサービスが存在しなかった。また被害女性は多岐にわたる問題を抱えていることが多く、行政の縦割りの仕組みでは適切な支援が提供できなかった。

C.事業ミックスタイプ

 AタイプとBタイプ両方の特徴を活かしながら、さまざまなニーズを枠組みを超えて結びつけて事業を作っているタイプで、組み合わせ方や手法はさまざまである。事業化がうまい団体の多くは、多かれ少なかれ「事業ミックス」という戦略を採っている。

 このタイプでは、利用者を巻き込む事業、支援者を巻き込む事業、利用者と支援者を結びつける事業などを複数作り、事業を組み合わせており、団体が事業を行うことで双方を巻き込みながら、一つの目的を達成していけるように事業が組み立てられている。

7)ささえあい医療人権センターCOML

 「病院探検隊」事業

  1. 団体の目的:患者が主体的に参加できる医療の実現。
  2. 事業の内容と特徴

     市民が「探検隊」として病院の設備やサービスをチェックし、病院にフィードバックする事業。市民の視点を医療に反映でき、病院は患者へのアピールになる。患者と病院をマッチングさせて両者のニーズを満たすと同時に、COMLの目的も達成する。

  3. 事業化におけるニーズの着眼点

     患者や将来患者となる一般市民は、どのような医療がよいのかなど、医療について判断できるようになりたいニーズがある。病院側には、病院の信用を高めたり、患者の意見を聞いてサービスを良くしたいと考えるニーズがある。

8)ティーンズポスト

 「ティーンズポスト」事業

  1. 団体の目的:「新しい時代の心の健康とコミュニケーション」を創る。
  2. 事業の内容と特徴

     子どもが相談を自由に手紙に書いて送る方法を使ったカウンセリング事業。自分自身が整理し、自立につなげる支援を行う。大人向けには有料のプログラムを提供する。大人と子どもの問題の共通性に着目し、収益のある事業とない事業をミックスさせている。

  3. 事業化におけるニーズの着眼点

     いじめや虐待などの様々な問題を抱えている子どもは、問題解決のためのサポートを必要としている。大人の中にも問題を抱えている人がおり、大人もまた、自分の問題に向き合うためのサポートを必要としている。

9)ヨットエイドジャパン

 「体験乗船会と海のバリアフリー推進」事業

  1. 団体の目的:障害者スポーツとしてのセーリングの普及・推進
  2. 事業の内容と特徴

     船舶や海上利用のバリアフリー化を目指す事業。体験乗船会やレースなどの事業によって障害者の能力と障害者が海に出るときのバリアを顕在化させ、ハード、ソフト両面のバリアフリーを実現する。

  3. 事業化におけるニーズの着眼点

     障害者がヨットを操船できることを示し、利用者のニーズを顕在化させる。障害者と一緒にヨットに乗りたい人や、社会貢献活動をしたい人や企業、船舶や港湾施設に関わる企業など異なる立場の人を事業によってつなげていき、団体の目的を達成していく。

 以上見てきたように、優れたNPOの活動(事業)戦略は、支援者や利用者のニーズの分析にもとづいて計画されている。そして、支援しやすい(「買い」やすい)事業を「製品化(プロダクト化)」して、支援者からの協力を得やすくしている。また、事業によって利用者や支援者のニーズを社会に認めさせ、団体の目的達成へとつなげている。

 NPO活動では、活動する側の「やりたいこと」に目がいきがちである。しかし、NPOが活動の中で成果を上げるためには、支援者や利用者のニーズに着目し、そのニーズから事業を組み立てることが必要である。つまり、「ニーズ志向型」の事業の組み立てである。とくに、支援者のニーズをきちんと分析して、目的達成のために支援者がどう関われるかを考えると、資金を得ながら事業を進めるより効果的な事業戦略を組み立てていくことができる。

質疑応答

Q.支援者のニーズを引き出すことは難しいと思うが、調査したNPOはどうやってニーズの分析をしているのか。

A.HIVと人権情報センターやCOMLは電話相談事業、ヨットエイドジャパンは体験乗船会事業など、ニーズの情報が入ってくるような別事業を持っている団体が多い。また、何か事業を行っていると自ずと支援者のニーズがわかってくるものである。「プロトタイプ(試作品)」を開発・実施していく中で、支援者のニーズに合うような事業を見つけだし、それを拡充して「プロダクト(製品)」していくことが大切である。

Q.環境首都コンテストで表彰されなかった自治体へのフォローはあるのか?

A.環境市民は「環境首都コンテスト」においてフォローアップを重視しており、表彰された自治体、表彰されなかった自治体とも、フォローアップを受けられる仕組みを作っている。全国各地にいる環境市民のネットワーク団体が結果のフィードバックを行っている。そうすることで、自治体の環境施策を全体的に向上させていこうと考えている。

報告:小山健太

2002.10.02

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