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NPOと自治体

2007年08月23日 17:28

パートナーシップ(2)特定非営利活動法人かながわ・女のスペース「みずら」

コーナーのご紹介:

このコーナーでは、NPOが実際に取り組んでいる地域課題を通して、NPOと自治体のパートナーシップがどうあるべきかについて考えていきたいと思っています。

活動の現場で実際に起きていることを通じて、NPOの限界、行政の限界がどういう点にあるのか、またそれぞれが果たすべき役割は何かについて、浮き彫りにしていきます。


団体名:

 特定非営利活動法人かながわ・女のスペース「みずら」

【団体概要】

特定非営利活動法人かながわ・女のスペース“みずら”(以下、“みずら”)は、女性の権利擁護活動に取り組むNPOです。1990年の発足以来、女性を取り巻くあらゆる問題を具体的にサポートすることをミッションに活動を続けており、女性の悩みに総合的に応える「みずら相談室」や緊急避難シェルター(避難所)の運営など、様々な先駆な事業に取り組んでいます。

【協働事業の内容】

緊急一時保護シェルターとは、様々な事情で居場所がなくなった女性が一時的に滞在できる避難所のことです。現在“みずら”は3つのシェルターを運営しており、このうちの二つのシェルターが自治体との協働で運営されています。

“みずら”では1990年、当時の社会状況の中で外国人女性の救援ニーズが増加したことに応えて、国籍や在留資格を問わず、保護を必要とする女性なら誰でも利用できる、最初のシェルターを開設しました。2000年にはDV被害女性を対象とした第二シェルターを、自治体との協働事業という形で開設し、2001年4月に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が成立し、2002年4月に施行されました。

このシェルターは、“みずら”が運営し、運営費は、DV法に基づく一時保護事業の利用料(委託費)でまかなうと同時に、県と県内自治体が利用の応分で費用を負担し、建物は、自治体(神奈川県)からの無償提供です。

さらに、2003年度から、三番目のシェルターとして、「中期滞在型シェルター」を開設しました「中期滞在型シェルター」とは、一時保護期間である最初の2週間をすぎた人が、その後最大6ヶ月間滞在できるシェルターのことです。利用者は、この期間に母子生活支援施設の待機や親子関係を修復したり、職業訓練を受けたり、離婚調停をすすめる中で、自信を取り戻し、自立に向かう準備を整えることができます。

【協働事業の背景】

“みずら”のある神奈川県では、過去に、夫からの暴力を逃れて行政に保護を求めてきた女性が、シェルターが不足していたために一時保護できず、殴り殺されるという痛ましい事件が起きていました。神奈川県行政は、この事件から、DV被害者の保護は行政の制度だけでは不十分であることを学び、DV法が成立する以前から、県下のNPOが運営するシェルターに対して財政援助を行い、行政だけでは被害者を一時保護できないので積極的に“みずら”のシェルターに紹介するなどの連携を進めていました。

DV被害女性の保護では、様々な手段を使って居所を突き止めようとする夫や恋人から女性を守りきらなければなりません。民間シェルターは住所を非公開にでき、被害女性が何も持たず身一つで逃げてきた場合でも、入所期間や入所資格、手続きの面で、公設シェルターより柔軟に対応できますし、DV被害者や外国人女性のように複雑な問題を抱え、多方面にわたる知識が必要な支援では、“みずら”のノウハウや専門性は貴重で、異動などで専門性が蓄積されにくい行政の窓口にとっても頼りになる存在でした。

DV防止法の施行により、DV被害者の保護のための一時保護制度が整えられ、DV被害の女性や母子が家を出て避難する必要があれば、2週間の一時保護所での滞在を国と都道府県が負担することになりました。法施行を前後して、“みずら”と、神奈川県下の各自治体の間で、シェルター運営の財政援助、“みずら”から行政への女性相談員の派遣やDV担当者研修の講師依頼など、いろいろな協働事業が進められるようになりました。

“みずら”と行政との協働は、シェルターへの財政援助という形でまずは始まり、DV法成立以前からDV被害者専用の第二シェルターを協働で運営する事業が次に始まりました。そして、緊急一時保護のためのシェルターがニーズに対応できるように整えられたことで、さらに発展的な事業として、DV法の適用による二週間後も引き続きシェルター利用が必要なニーズの増加に対応して「中期滞在型シェルター」の開設に至りました。

「中期滞在型シェルター」は、日本ではまだほとんど取り組みがない事業で、今後の実践が新たな波及効果を生み出す可能性を持った先進的な事業です。

写真1

事務局長の阿部裕子さん

【協働事業の成果】

神奈川県には現在、公設、民設合わせて十数カ所のシェルターがあり、それぞれが役割分担をして、女性や母子の支援を行っています。“みずら”は、3種類の機能の違うシェルターを運営し、複雑な事例への対応経験も、スタッフの体制も整っているため、特に支援が難しいケースの受け入れが増えています。

この“みずら”のケースでは、DV法施行以前からの協働関係がまずあり、法施行でDV被害対策の予算化が進んだとき、新しいシェルター開設に際し行政が“みずら”に運営を打診するという経緯がありました。相談を受けた“みずら”は、神奈川県内のシェルター整備状況から、新しい緊急避難シェルターを開設するより、むしろ、発展的な施設を作る方が現実のニーズに合っているという提案を行い、「中期滞在型シェルター」の開設が実現しました。

DV被害者の援助を進める中で、“みずら”は以前から、恐怖にさらされ、深く傷ついた被害者には、2週間という一時保護期間だけでは十分な自信の回復と自立につなげることが難しく、中期滞在型の支援施設が必要と感じていました。行政と“みずら”との協働で、横並び的に緊急一時保護シェルターを増やすのではなく、機能が振り分けられた施設を複合的に運用することが可能になり、よりニーズにあったDV被害者支援体制が整えられたのです。

行政とNPOとの協働では、お互いの立場や役割を理解することが非常に重要です。神奈川県では、DV被害者の一時保護に関しては、NPOと行政とが守秘義務に関する文書の取り交わしを行い、ケースごとに担当者が集まって情報交換、対応の決定をするケースカンファレンスを設けています。NPOも行政職員もケースに関わる立場として対等な関係の中で、どのように支援したらいいかを率直に話し合う、このケースカンファレンスは、関係者が一同に集まって被害者の処遇を検討する、と言う合理的なシステムで、被害者の置かれた状況と希望を共通に認識できるのでNPOと行政が、お互いの立場の違いを理解し、協力し合うための連携づくりの場となっています。

写真2

公開シンポジウムの様子

【協働の課題】

長期間にわたる暴力によって、DV被害女性は、自分で物事を決める力や前向きな気持ちなど、自立に必要な主体性や意志力を奪われています。せっかく勇気をふるって夫の元から逃れてきたにもかかわらず、サポートを得て少し気持ちが落ち着くと将来に不安を感じ、暴力があっても生活を保障してくれる、と、夫の元に戻ってしまう人もいます。

このような心理状態にあるDV被害者を援助するためのシェルターは、単なる宿泊施設でなく、医療・心理面でのケア、具体的な生活スキルの獲得や就労支援など、自立に向けての専門的なサポートやケアプログラムを提供できなければなりません。ところが現在は、良質のプログラムを提供できるスタッフやボランティアの研修、プログラム開発などのソフトの部分の費用は、補助金や委託費に適切な額として反映されていません。

DV法に基づく委託料(6530円/日/2003年度)は、利用者の滞在の日額で支払われますが、利用日数で金額を算出する委託費は、利用者の数にかかわらず、一定の維持費や人件費がかかる施設運営側としては、かなり使いにくいお金です。

“みずら”では、補助金、委託事業、寄付、会費などを組み合わせてやりくりし、この問題を乗り切っていますが、“みずら”のように実績も専門性もあるNPOが、資金面で適正な評価を受けられていないことは、協働の課題という面だけでなく、地域の課題解決という全体の目標から見ても損失です。ハード面だけでなくソフト面で、NPOと行政の間に有効な資金環流の仕組みが作られることが、今後の協働事業の発展のためには重要となってくるでしょう。

写真3

クリスマス・チャリティーの様子

【結び】

“みずら”は、夫の元に戻るという選択も含め、支援した女性たちがどれだけ自分で自分のことを決めて行動できるようになったか、何人保護したかではなく、何人が自分の道を自分で歩いていけるようになったかを重視します。

NPOと行政が協働事業を進めることで、何人支援したか、いくつの施設を作ったかではなく、ニーズによりあった支援体制をどのように作っていくか、というニーズ重視の事業運営という視点が生まれることを、“みずら”の事業は示しています。協働事業のポイントを一言で、と求めたところ、「いかに風通しの良い関係を作れるか」という答えが返ってきました。問題解決のための率直なコミュニケーションと、異なる立場を理解しながら事業を進めていくタフさが、協働事業を成功に導いていくのではないでしょうか。


■ 団体概要

設立:

1990年

事務局:

神奈川県横浜市

設立目的:

女性のための相談室とシェルターを常設。女性の自己決定権を尊重しつつ、内容に即した援助を行うことを目的とした、女性の権利を守る市民活動団体。

主な事業:

  1. 相談事業(みずら相談室)
  2. シェルター運営
  3. チャリティイベントの開催
  4. ボランティア相談スタッフの養成・育成・レベルアップのための研修の開催
  5. 講師派遣
  6. 労働相談「女のユニオン・かながわ」

代表:

福原啓子(代表理事)

スタッフ:

常勤職員5名、電話相談スタッフ(ボランティア)約50名

会員数:

約320名

直近の決算額:

約4500万円(2003年決算)(内訳:シェルター事業収入、委託料、会費、寄付金、補助金等)

■ 取材関連情報

取材日:

2004年1月19日(月)16~18時

場所:

みずら事務所(神奈川県横浜市)

対応者:

阿部裕子(事務局長)

取材:

松原、鮎川(メモ作成)

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