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2003年の報告

2007年08月29日 13:14

欧州評議会ストラスブール会議報告

 昨年、11月4日、5日の両日、フランスのストラスブールで欧州評議会主催の「NGOに関する市民フォーラム(NGO:民主的ガバナンスにおけるキー・プレイヤー)」と題する会議が開かれた。当初、本会議に財政支援をしたストラスブール日本領事館からシーズの松原明事務局長宛てに参加依頼が来たのだが、NPO法改正や支援税制改正の動きの真っ只中にいて東京を離れられなかった松原に代わって参加することとなった。本会議には、中・東欧を中心とする汎欧州地域のNGO代表をはじめ、加盟国政府代表、欧州評議会議員会議メンバー、欧州地方自治会議のメンバーなど、約130名が出席した。

 ストラスブールには、欧州評議会とともに欧州人権裁判所と欧州連合の議会である欧州議会が立ち並ぶ。

 欧州評議会は、1949年に、人権、民主主義、法の支配と言った価値観を共有する西欧の10ヶ国が、その実現のための加盟国間の協調を拡大する事を目的として設立された。冷戦構造が終焉すると、中・東欧諸国や、独立国家共同体(CIS)などからの加盟が相次ぎ、現在の加盟国はロシアを含め44ヶ国にのぼる。これらの国々では、今回の会議のテーマであるNGOの法的地位や支援制度が確立していないところも多い。会議では、特にこれらの国々からの参加者が目立ったが、NGOに対する関心の高さをうかがわせた。

 今回の会議の目的は、

  • ヨーロッパで、NGOが民主的な政策決定に参加するようになった事例と傾向を検証し、
  • NGOが参加型民主主義の推進者になるために四者協議(NGO、大臣級会合、欧州議員会合、欧州自治体会議)のフレームワーク作りを推進し、
  • NGOと欧州評議会との協力関係強化を目指す

というものであった。

 欧州評議会では、2002年7月に、NGOの法的地位に関する基本原則を採択している。

 この基本原則は、NGOの結成の自由、言論・表現の自由、権利と義務、法的な保護の4つから成り立っている。この基本原則は、法的拘束力は持たないが、加盟国でまだNGOに関連する法が整っていない国などに、基本原則の遵守を呼びかけているようで、本会議でも熱心な議論が進められた。

 また、欧州評議会は、50年前から、国際的な活動(3ヶ国以上で活動をする)を行うNGOに諮問ステータスを付与している。欧州評議会は、民主的なガバナンスを実現するためには、NGOの存在は不可欠であるという基本合意のもと、国際NGOの法人格の認知に関する欧州条約の批准を促進しているが、同時に、欧州評議会におけるNGOのステータスを向上させるために、この諮問ステータスを参加ステータスに変更する方向で検討がされており、四者協議の構想を実現へと近づけているようだ。

 さて、オープニングのセッションは、UCLAの市民社会センター(Center for Civil Society)のディレクターであるヘルムート・アンハイアー氏が基調講演で口火をきった。アンハイヤー氏は、過去10年間をふりかえり、そこにあるNPOの役割のふたつの潮流について述べた。ひとつは、サービスやモノを提供する経済的主体として、そしてもうひとつは、ソーシャル・キャピタル中心的存在としての市民社会の構築者という役割である。このふたつの潮流の中で、NPOはますます重要になっているが、このふたつは政策立案上、あるいは理論の上で、時に相反する矛盾を内包している。

 アンハイヤー氏は、この潮流の中で、今後のNPOの方向性として4つのシナリオを提示した。ひとつは、専門性を高め、同時に非営利の特性を生かすことで、公共事業などを契約や競争入札などを通して委託請負し、行政にかわってより効率のよいサービスを提供する新公共マネジメント(NPM)シナリオ。ひとつは、コミュニティにおいて人と人が結びつきを深め、多様な人たちの参加を可能にするような市民社会を構築するソーシャル・キャピタル・シナリオ。ひとつは、社会の多様な構成員が参加できるしくみづくりを行うために、政府や企業の行動や政策をモニタリングしたり、さまざまな声を政策に反映させる働きかけをしたり、政策の代替案などを提示したりするリベラル・シナリオ。そして最後に、社会サービス、教育、福祉、文化などにビジネスマインドを持ち込み、より企業に近い形で社会サービスを提供する企業化シナリオである。アンハイヤー氏は、どちらかというとアメリカのNPOはNPMシナリオと企業家シナリオが、ヨーロッパのNPOはNPMシナリオかリベラル・シナリオに近いという感想も述べた。

 アンハイヤー氏の講演のあとに、私はディスカッサントという立場で、上記のシナリオを念頭に、日本のNPOセクターの成り立ちやその特徴、支援税制を含むNPO法の現況、NPOの課題等について簡単に話をした。日本でも行政の委託事業の増加やビジネス化のトレンドが強まっているが、その中で、どのような社会を実現したいのか、そのためにNPOが何をしていくのか、その存在意義がどこにあるのか、などの本質的な議論が今こそ重要ではないだろうかと述べた。

 このセッションの議論は、その後のセッションで何度も話題にのぼった。人権や民主主義のためにNPOの役割が重要であり、社会の少数派が政策やさまざまな意思決定にかかわれるような社会の実現のためにNPOの使命があるという点は繰り返し、強調された。しかし、その背景には、行政やビジネスに替わってサービスを供給するというNPOの役割が大きくなっているという現実がどこの国でも地域でもあるようだ。

 政策上、あるいはNPOの側も資金の安定などという点から、今後、ますます企業化シナリオやNPMシナリオが強くなっていく流れの中で、市民社会構築という大きな役割とのバランスをきちんととっていくことは、政策決定者にとってもNPOにとっても大きなチャレンジである。そこにいかに立ち向かっていくか、どのような政策が考えうるのかが、今後の大きな課題になっていくだろう。

 さて、1日目の午後から2日目の午前中にかけて、地方のガバナンス、国家レベルでのガバナンス、そして欧州・国際レベルでのガバナンスにおけるNGOの役割という3つの分科会が開催された。初日は、欧州・国際レベルでのガバナンス、2日目は、地方自治のセッションに参加したが、後者は非常に興味深かった。欧州・国際という切り口だと、どうしても「旧西側」対「旧東側」の話になりやすく、それぞれの国の立場の違いが前面に出てしまい、共通の問題になかなかたどり着けないもどかしさがあった。その点、地方のガバナンスのセッションでは、一般市民や、青少年、その他の少数派をいかに政策決定に参画させるかなどの共通課題への取り組みや、さまざまな地域で実際に行われている事例やプログラムが参加者からつぎつぎと紹介された。地域や国を越えて互いに学び合いながら、活発な意見交換や議論が行われたように思う。

 最後になるが、日本のNPOの話は、思った以上に反響が多く、日本のNPOについて、特に中・東欧諸国やCIS諸国の参加者から質問や、会議後もメールで問い合わせが来ていることを報告させていただく。

2003.01.18

シーズ=市民活動を支える制度をつくる会
国際プログラム 黒田かをり

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