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新!特別連載コーナー

2007年08月23日 16:53

米国の寄附事情(番外編)

特別連載コーナー「米国の寄附市場」は、10回シリーズの予定で、米国の10団体(NPO、企業、財団)の寄附についての聞き取り記録をご紹介しました。ですから、これは番外編です。ただの紹介だけで終わるのもどうかなと思い、もう一回だけ寄附について私が考えていることなどを付け足すこととします。

実は、この連載を始める前は、「日本のNPOはあまり寄附に関心がないようだから、あまり読まれないのではないか」と心配していました。およそ5割のNPOが、そもそも特に寄附を募集していないという事実が調査で明らかになっていたからです。

でも、その心配は杞憂だったようで、多くの方々から「おもしろいですね。勉強になります」というお言葉などをいただきました。続けて読んでいただいた方々には、心からお礼申し上げます。

さて、現在、NPOが抱える問題はたくさんありますが、2000年のシーズの調査によると最も大きな問題は、「収入の見込みが立ちにくい」というものでした。それは、3年たった今も、あまり変わっていないように思います。

NPOの資金源は、会費(※)、寄附金、国や自治体などからの補助金、財団などからの助成金、本来事業による収入、本来目的とは違う事業からの収入、借入金などがあります。

私は、このなかで最も市民活動団体であるNPOに相応しい資金は、会費と寄附金であると思っています。もちろん、他の資金がいけないという訳ではありません。他の資金もとても大事です。

しかし、会費や寄附が多いということは、その団体が市民から支持を受け、市民を代表し、市民の意志を市民とともに実現しようとしている団体に他ならないのではないかと考えます。まさに、NPOがNPOである正当性を表すもののような気がします。

(※ 会費には、寄附的な意味あいの会費と、会費を払うことでサービスを受けることができる事業収入的な会費があります。後者は、たとえば会費を払うと、配食サービスが受けられるというように、会費が料金となっているような場合です。ここから寄附という時には、前者の寄附的な会費を含んで寄附と呼ぶことにします)

なかには、「NPOは寄附がもらえると思って甘えている。一般企業と同じように、きちんとした経営をして料金収入などで成り立っていけるようにならないといけない」と強く主張する人もいます。もちろん、きちんとしたマネジメントをしなければならないのは、NPOであっても企業であっても同じです。

でも、寄附をもらえているNPOは、本当に甘えているのでしょうか。そんなに簡単に寄附は集まるのでしょうか。

米国の書店では、数多くの募金に関連する書籍を見つけることができる。

米国に行って強く感じたことは、寄附を多くもらっているNPOほど、事業(NPO活動)においてもプロフェッショナルだ、ということです。事業がいいかげんなNPOには、寄附は普通はこないのです。きたとしても、1回限りで終わってしまうでしょう。

寄附募集には、大事なポイントがいくつもあると思いますが、ここでは大雑把に3つの基本のステップだけを書いてみます。

第一は、寄附を募集する時には、そのお金が何に使われ、それはどのような意味を持ち、どんな人たち(あるいは、モノ)が、どのように変化していくものなのか、をきちんと説明することです。そして、寄附をくれた人に対しては、そのお金を受け取ったら、適切な時期に(たとえば1週間以内)に、「そのお金がその事業をするのにとても大切なものであること」「いただいたお金で何をしようとしているのか」、そして寄附をいただいたことに対する感謝を、できるだけパーソナルに伝えること。

(パーソナルというのは、いかにも大量印刷して事務的に配っているように見えないものの方が良いということです)

第二に、その事業が一定の時間がかかるものであれば、それが終わるまで、定期的に事業の中間報告をすることです。この時には、できるだけその事業の実感が伝わってくるようなものにすると良いと思います。成功していることだけではなく、その事業において苦労していることなども、事実を伝えるストーリーとして感動させる力を持つ場合があります。この報告は、たとえば機関誌などを利用して行うこともあると思います。でも、できるだけ、そこで頑張っている人の写真、言葉、メッセージなどを使って、寄附者の目に見えるように工夫をした方が良いと思います。これがうまくいくと、寄附者はその事業の応援者となっていくと思います。

第三に、事業が終了したら、その成果を報告することです。この時、この事業は「あなたからの寄附がなかったら、できなかったこと」であることを伝えます。正しい会計報告も必要ですが、それとともに、その事業によって、誰が(何が)どう変わったのか、それがどういう意味を持つのかを伝え、あらためて感謝を述べること。この時、もしその事業の受益者からのメッセージが入っているとより喜ばれると思います。

この3つの基本ステップは、あらためて書くまでもない、当たり前のことです。しかし、なかなかこれをしっかりと実行しているNPOは実際には少ないように思います。団体の規模にかかわらず、この基本をしっかりやっていくと、寄附者は「私も世の中を少し良くする力を持っていた」「私も世界を変えるお手伝いたできた」と感じるのではないでしょうか。そして、そのことが次の寄附へとつながっていくのだと思います。

アカウンタビリティという言葉が、よくNPOの間では使われます。よく「説明責任」と以前は訳されていましたが、これは結局、NPOが実施する事業に関係する人たちに対して、あらかじめ約束していたことを果たし、そのことをきちんと適切な形で伝えるということだと思います。

これに加えて、米国では、寄附者のニーズをきちんと把握して、それを満たしてあげるように心を配っていました。日本では、「陰徳の美」という伝統があるからか、寄附していることを人前でひけらかすのは恥ずかしいこと、と考えられているようです。しかし、米国では寄附をしていることは誇りであり、寄附を受け取ったNPOは、パンフレットや機関誌でその事実を掲載して、きちんと他の人に分かるようにしています。日本でも個人はともかく、企業であれば、こうした心遣いが欲しい、と思うのではないかと思います。

デンバーの子ども美術館の入り口には、さまざまな形で、寄附者や寄附団体の名称が紹介されている。

他にも、寄附を集めるには、さまざまなテクニックが必要です。米国では、ファンド・レイザーといって、寄附集めの専門職の人たちがいます。こうした人たちは、あるNPOで成功したらヘッドハンティングで、次のNPOに移っていったりもします。ファンド・レイザーの人たちの大きな会議もありますし、大学でもファンド・レイザーになるための授業があります。

「米国はキリスト教文化が背景にあるから、みんな寄附するのだ。日本とは違う」という人もいますが、米国でも待っているだけでは寄附はきません。米国のファンド・レイザーたちは、新聞やTVで社会状況を観察し、さまざまな工夫を編み出して寄附を集めています。一方、日本ではこうした努力をしているNPOは、まだわずかなように思います。日本では寄附市場を耕す試みは、まだなされていないようです。

「お金をもらうなんて、はしたない行為だ」と考えている日本のNPO関係者もいますが、寄附はお金をもらうだけの行為ではありません。寄附をしてくれた人に変わって、その人の意志を代わりに実現することだと思います。そして、その過程や成果をきちんと伝える、という行為を通じて、寄附者にちゃんと満足感を戻してあげる行為です。

米国のシティ・ハーベストのエリクソン事務局長は、「人は何か良いことをしたがっているのです」と言っていました。これが正しいとすると、もしNPOが寄附を集めないというなら、良いことをしたいという人たちのせっかくの機会を奪っている、ということにさえなるかもしれません。NPOが市民活動団体であるのなら、ぜひ「何か良いことをしたい」と思っている人たちを巻き込んで、それで力を得て活動を広げていきたいと思うのです。

シーズ事務局・轟木 洋子


この連載シリーズは、国際交流基金日米センターより助成を受けた「NPOのアカウンタビリティモデルの事例を通じた日米比較プロジェクト」の一環です。この場を借りて再度、国際交流基金日米センターの皆さまに感謝申し上げます。

なお、この助成事業の成果として、シーズでは現在「日米の寄附市場とNPO」という報告書を作成しました。

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