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NPOの信頼性

2007年08月23日 17:52

訪米調査の事例から(10)ロイヤーズ・アライアンス・フォー・ニューヨーク

2005年9月5日から17日まで、シーズでは国際交流基金日米センターの助成を受けて、米国のワシントンD.C.、ボルチモア、ニューヨーク、シカゴ、インディアナポリスの5都市を訪問しました。訪問団は、シーズ事務局長・松原明、茨城NPOセンターコモンズ事務局長の横田能洋、グローバル・リンクス・イニシャティブ事務局長の李凡、シーズ・プログラムディレクターの轟木洋子の4名(敬称略)で構成。NPOの信頼性に係る日米の現状、また信頼性向上のための取組みなどについて、23の団体を訪問し、米国側の専門家たちと意見交換をしてきました。

そのなかで、特に印象に残り、日本の皆さんにも参考になると思われる15の記録をご紹介します。

※ご紹介する方々の肩書きや団体の活動などは、訪問当時のものであり、その後、変わっている可能性があります。ご了承ください。また、文責はシーズ事務局にあります。

第十回 ロイヤーズ・アライアンス・フォー・ニューヨーク

事務局長・弁護士 ショーン・ディラニー氏
2005年9月13日(火)訪問

ロイヤーズ・アライアンス・フォー・ニューヨーク(Lawyers Alliance for New York)は、ニューヨーク市内のNPOに法律サービスを提供するNPO。1969年設立。これまで、1万件以上のNPOに1億ドル以上の価値に値する法律サービス(訴訟問題を除く)を実施してきた。同団体内の弁護士および700名以上のボランティアの弁護士がNPOにプロボノ(無償)で法律サービスを提供している。ショーン・ディラニー氏は、同団体の事務局長であり、免税と政府機関に関するIRS諮問委員会のメンバーも務めている。


訪問団:

 まず、やっておられる活動内容について教えて欲しい。

ディラニー氏:

 この団体は、すでに36年前から活動している。目的は、ニューヨーク市内の低所得者のために活動しているNPOに法律に関するサービスを提供すること。我々もNPOだ。

活動の対象となるのは、第一には低価格の住宅提供やホームレスのために活動しているNPO、2番目には衰退している地域の発展のための活動をするNPO、三番目には子どもや若者を対象にした活動をしているNPO、4番目には外国からの移民を支援しているNPO、そして5番目に高齢者などへのサービスをしているNPOだ。こうしたNPOには、黙って待っているのではなく、私たちから積極的に「法的なサービスが受けられますよ」、という働きかけを行っている。

提供する法律サービスは、法人法、税法、不動産に関する法律、雇用に関する法律に関するものなどさまざまだが、裁判になった場合の弁護サービスはしていない。

この事務所には、弁護士と、スタッフとしての弁護士の数をあわせても11名しかいないが、昨年は440のNPOを対象に法律のサービスを行うことができた。人数が少ないのにこれだけのNPOにサービスを展開できた理由は、100以上の法律事務所、また企業の法務部とネットワークを持っているから。私たちが引き受けるケースは、すべてボランティアと私たちとの「コ・カウンセル」という共同弁護の形を取っている。

訪問団:

 依頼するNPOの規模の大小は問題にならないのか。また、料金は取るのか。

ディラニー氏:

 規模の大小に限らず、ニューヨーク市の低所得層のために活動しているNPOであれば対象となる。実際、活動対象のうち、およそ20%はできたばかりの非常に小さなNPOだ。

料金は一応あって、規模の大小に関わらず一律。ただし、昨年お金をもらったのは活動対象となった440のNPOのうち5%以下。私たちの財源のほとんどは、個人、企業、法律事務所からの寄附、そして財団の助成金や行政からの補助金でなりたっている。

ここニューヨークには、法的なサービスのニーズが高いのだが、幸運なことに、ボランティアをしたいという弁護士や法律事務所もものすごく多い。

ニューヨークでは、法律事務所どうしが人材をめぐって競争しあっている状況で、優秀な若手の弁護士を引き止めるというのは非常に大変なこと。弁護士のボランティアニーズは高いから、それを私たちは利用しているところがあり、法律事務所としても、引きとめに役立つなら自分たちのビジネスに有利に働くと考える。

こうした法律事務所のなかには、弁護士を私たちの事務局に無償で順番に提供してくれるところもある。インターンではなく、エクスターンと呼んでいるが、海外にも支所のあるような著名な法律事務所だったりする。

訪問団:

 今回の訪問は、NPOの信頼性の確保について意見を伺うのが目的だが、これについてお話を聞きたい。

ディラニー氏:

 私自身、以前はニューヨーク州のチャリティ局でNPOの法執行に関することを担当していたり、IRS(内国歳入庁:日本の国税庁にあたる)の全国アドバイザー委員会のチャリティ関係の法執行アドバイザーだった。ただ、こうしたNPOに対する監督というのは、一種の幻想のようなものだ。というのは、米国全体では100万以上のNPOがあるが、これらに対してIRSが監査できるのは1%以下だから。ここに、イラク戦争があったり、カトリーナなどの災害もあったりするので、IRSの人員はさらに不足している。退職による自然減もある。ニューヨーク州のチャリティ局も数万のNPOの監督を20~30人程度で監督している。だから、端的にいうと誰も管理していないのと同じ。

そのため、NPO自身による透明性確保、情報開示に焦点を合わせるのは正しいことだ。一般市民、新聞などのマスコミの目がなければ、監督のために莫大な費用が必要となる。

訪問団:

 いくつかNPOを監視するNPO、ウォッチドックと呼ばれるようなところが、NPOを格付けして発表したり、あるいは認定シールを発行したりしているが、これらはどうか。

ディラニー氏:

 賛成する人もいるし、批判する人もいる。

賛成する人は、少なくともそうしたウォッチドッグ団体は、NPOの基本的情報を集め、財政はどうなっているのか、どのような管理をしているか、どういう支出をしているか、理事はしっかり仕事をしているかなどを見ているから、という。批判する人は、現実性のない厳しすぎる尺度ではかっているから、という。問題は、大学や病院のような大規模NPOと、スタッフが2名であとはボランティアでやっているような小さなNPOも同じ基準で見ているところ。

訪問団:

 メリーランド・ノンプロフィッツという、メリーランド州のNPOセンターが、スタンダード・フォー・エクセレンスという「資格」をつくって普及をはかっている話を聞いた。この資格を取るのはひとつのインセンティブになるかもしれないが、大規模な団体と、資格を取る余裕のない小さな団体の差を広げてしまうのではないかという懸念があるが、どうか。

ディラニー氏:

 そのスタンダード・フォー・エクセレンスについては、ちょっと複雑な気持ちだ。そういう基準があるのは良いことだが、その資格を得るには、やはりリソースが必要だ。そのため、かなり多くのNPOはその枠外になってしまう。

そういう資格を得て寄附をもっと募ろうというところは、すでに一定のリソースがあるNPO。ほとんどのNPOは、そうした資格を知らないし、知っていてもリソースが限られていて、資格を取ることができない。だから、すでにリソースのあるNPOがさらに資金を集めるための資格になってしまう。ひとつの矛盾、パラドックスがある。

そういう資格さえ取る余裕のないNPOこそ、本当にサポートを必要としている。だから、スタンダード・フォー・エクセレンスは完全な解決策とはいえないだろう。

訪問団:

 米国では現在、議会でNPOへの規制を強めようという法案も出ているようだが、それについてはどうか。

ディラニー氏:

 上院に出ている法案を作った人物は、ルールをたくさん作れば解決するというかもしれないが、それは全くの間違い。答えは1つ。現在の法律をきちんと執行することだ。規制が多くなればなるほど、多くの健全なNPOの負担が大きくなるだけ。監督側も新しく増えた規制に労力を奪われ、結局は本当に罪を犯している人たちを見逃してしまう恐れもある。現在ある法律をしっかりと執行していくことが鍵だ。


ディラニー氏は、大変気さくで笑顔のステキな方だった。また、話題に出てきた弁護士のエクスターン(同団体へのボランティア)も、続々と会合に参加。皆若く、NPOのためにボランティアをすることが楽しそうであった。ニューヨークの法律事務所は、若い弁護士確保のために、こうしたボランティア活動を奨励しているというのは、さすがにアメリカという感じ。エクスターンの方々には、「日本のコイズミはどうか」とか、自民党が大勝した衆議院選挙の結果を知っていて「結果をどう思うか」など、NPOを超えた質問を次々と受け、訪問団も四苦八苦。若いボランティアのバイタリティも感じた訪問であった。

2007.01.19

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