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2008年の報告

2008年03月28日 10:32

NPO法成立10周年記念フォーラム

 2008年3月18日18時半より20時半まで、東京の中野サンプラザにてNPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会が主催した「NPO法成立10周年記念フォーラム NPO法成立10年:語り合おう! これまでとこれから」が開催された。

 NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会は、特定非営利活動促進法(通称NPO法)に関する税制改革と法人制度改革について検討し実現する運動体として、全国のNPO/NGO支援団体によって結成された団体。

 今回のフォーラムはNPO法成立10周年を期に、改めて市民活動を促進する制度について考え、またNPO法施行10周年の日であり、新公益法人制度のスタートとなるであろう今年12月1日に向けて、議論を開始させるためのもの。

 会場には日本各地からNPOのみならず、助成財団、研究機関等から計56名の参加者が集った。

 総合司会は日本NPOセンターの吉田建治氏が務めた。

【開会挨拶】

 開会にあたり、子どもNPO・子ども劇場全国センターの名越修一氏が、

「明日でNPO法成立から10周年となる。NPO法人認証数は毎月およそ500強ずつ増加して来ており、現在33000を超す法人が認証されている。社会的にもその存在が認められてきている一方で、解散法人も年々増加しており、それらのうち9割は自らの判断で解散を選んでいる。資金面で運営が苦しい法人が多数存在するとの話を聞いているが、何が問題であるのか。また、今後どうしていけばよいのか。新公益法人制度の開始と合わせ、今後我が国の中でNPO、市民団体がどうあればよいのか。本日は、今までの10年を振り返り、今後の展望等に関し皆様と意見交換を行いたいと考えている。」

と、本日の趣旨を説明し、開会の挨拶とした。

【基調報告】

 引き続いて、日本NPOセンターの山岡義典氏より「改めて考えるNPO法成立の意味 ~これまでの10年・これからの10年~」と題し、基調報告があった。

 山岡氏は、

「従来の非営利~公益法人制度は、主務官庁による設立許可と監督が必要であった。そうした中で80年代に市民活動が台頭し、新しい非営利法人制度の必要性が議論されることとなった。90年代前半より、具体的な制度や仕組みについての調査・提案及び市民立法活動が開始されていた中、95年の阪神・淡路大震災を一つの契機とし、議員と市民による新しい法人制度実現への活動が活発化した。
 その後、政府や経済界、議員等と協力し、最終的には議員立法で全会一致にて成立した。また、都道府県の業務に関しても、条例によって行うこととしたため、各都道府県の関心も高まったのではないだろうか。
 NPO法の目的は、市民が行う自由な社会貢献活動が、公益の増進に寄与するという「市民公益概念」の確立を導くことであった。それまでは、国家、省庁が公益であると認めたもののみが公益であるとされてきた。
 NPO法の意義とは、市民団体が契約主体としての法人となれたこと、市民団体と議員の活躍による立法(市民立法)であったこと、非営利~公益法人制度改革への新しい動きを誘発したことの3点であると考えている。
 これからは公益法人制度と、NPO法人制度という2つの制度が並存することとなる。これから公益法人制度改革が開始されるが、私は、5年後の移行期間終了時に改めて大きな変革が行われる必要があるのではないだろうかと予想している。その改革の後に、各団体がどちらの制度を利用するのか判断することになるのではないか。また、NPO法人制度に関しても、段階ごとに見直しをしていくことが必要であると考えている。」

と述べた。

【参加者全員討議】

 大阪ボランティア協会の早瀬昇氏が進行を務め、「この10年、市民社会はどう育ったか」と題し、参加者全員による討議が行われた。

 討議に先立ち、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会の松原明、NPO事業サポートセンター宇都木法男氏、国際協力NGOセンターの下澤嶽氏、北海道NPOサポートセンターの北村美恵子氏、市民フォーラム21・NPOセンターの藤岡喜美子氏、NPOくまもとの上土井章仁氏よりスピーチがあった。

 松原は、

「シーズ設立の目的は公益非営利セクター活動の一部である市民活動を促進することであり、そのために市民活動を推進する法律、具体的には市民一人ひとりが行う様々な社会貢献活動を推進する機関としての法人制度の制定を目指した。
 今後の課題は、積み残された課題の一方で、どのように市民活動を推進していけるか、社会に参画していきたい人々のニーズにどうこたえていけるか、市民活動団体の社会的成果はどこに求めるか、といったことではないかと考えている。そして、これらの課題解決のポイントは、NPOが市民一人一人を社会の課題につなげていく役割を果たすことができるかどうかにかかっているのではないだろうか。」

とNPO法の性格、成立後これまで10年の振り返り、今後10年の展開の概要を説明した。

 宇都木氏は、

「市民活動はこれまで、公害告発をめぐる市民運動のように、要求を通すための市民活動から、自分自身の課題解決を目指す市民活動へとシフトしてきた。特に福祉分野などにおいては、サービスの受益者がサービスの提供者へと変化して来た。このことは、市民活動が大きな役割を果たしてきたこと、及び地域社会変革、あるいは社会変革を行ってきたということの証明になるのではないか。」

とこれまでを振り返った。

 その後、

「今後は、退職後の男性がどのように地域社会とつながっていけるか、がポイントとなると考えており、その点で市民活動が果たす役割は大きいと考える。
 しかし、市民活動団体の内情は厳しいものがある。意見は様々にあるが、個人的には“社会を担う”という役割をもった団体が行政の下請け団体となっていくのだけは避けたいと考えている。
 また、多数存在している事業型のNPOを支えられるようなNPO法であるべきではないかと考えており、そのための改正が必要ではないだろうか。
 それ以外の課題としては、人材の確保、またNPOごとのネットワークの充実(特に地域ネットワーク、その中核となる中間支援団体の充実)を図ることが挙げられよう。」

と述べた。

 下澤氏は、

「法人となることの意義については様々な議論があるかと思うが、以前所属していた団体においての議論の結果、その一つは“責任の明確化”ではないだろうかという結論が導かれた。予算規模がある程度以上であったり、職員の雇用者であるような団体には責任がうまれるのではないだろうか。
 また、法人格の中でも、NPO法人格は行政の干渉をある程度防ぐことが出来るものであるため、NPO法人化した経験がある。」

と自身の経験を振り返った。

 さらに、

「NPO法人が増加して関心が高まる一方、社団法人、財団法人などの数が減少し、公益法人に関する関心が薄れる、2極化のような現象が起こってきた。
 また、会員をあえて増加させない戦略を取っている団体、事業優先の団体など、多様な法人が設立されている。
 更に、認定NPO法人制度の基準の厳しさ、審査にかかる時間の長さは問題かと思う。」

と現状を分析した上で、

「NPO法人の数は増加してきたが、市民社会の成熟という意味ではどうであったのか。これからNPOは、更に広い認知を得るべきではないかと考えるが、そのためのポイントの一つはアカウンタビリティの向上、その表裏一体の問題としての、寄付文化の醸成である。もう一つのポイントが、自ら市民へリーチしていく能力の強化ではないかと考える。」

と述べた。

 北村氏は、

「北海道NPOサポートセンターの事業規模は、受託事業の割合が75%となり、政府の緊急雇用対策制度の利用等も行った2002~2004年頃がピークであった。
 法人格取得に関する相談を受けているが、その内、法人を解散したいという相談もあった。尚、こうした運営支援のアドバイスからはなかなか収益が上がらず、経営は苦しい。
 一方で、NPOバンクや基金の設立などの新しい試みも行ってきた。」

と、各地の支援センターの現状報告として、北海道NPOサポートセンターの歩み、活動状況を紹介した。

 藤岡氏は、

「私は、民であることを誇りに活動していきたいと考えている。その際、行政との関係の中で、社会を変えながら活動していけるかがポイントとなるのではないだろうか。
 これまで10年の動向を振り返ると、行政は、大きな政府から小さな政府へ、行政改革から行政経営、地域経営と変化してきた。そうした中で、NPOへの期待は高まり、多くのNPOが誕生し、NPOという言葉が普及したこと自体は喜ばしいと感じる。しかしその一方で、財政基盤が脆弱なために、疲弊しているNPOが目立つように思う。資金の問題を解決できないのは、外部へ情報発信をしていく力が弱いためではないだろうか。NPOは、人材不足のために、資源を引きつけるだけの活動や事業を考えられていないのではないか。」

と現状や課題等を分析した後、

「今後、NPOは社会的存在感のあるサードセクターとしての発信をしていく必要があるのではないか。
 また、公共経営のあり方が大きく転換しようとしている状況の中、大きな変化が起こる際に我々がどのように対応していくのか、普段から準備をしていくことが必要であろう。」

と提言した。

 上土井氏は、

「NPOという言葉が普及したことは評価できる。
 しかし、一方で運動と運営のバランスが取れていない点は問題である。また、NPOが市民活動をする団体であるのか、事業を行う団体なのか、事業型NPOに対する疑問も生まれた。」

とこれまでの10年を振り返った。

 その後、

「NPOは組織力が欠如しているのではないか。組織として外部の意見を反映させながら経営できているかどうか疑問を感じる。資金不足の問題に関しては、まだ原因分析をし切れていないのではないか。協働による疲弊も広がっている。また、社会を変えるために一番大切な政策提案能力が欠如しているのではないだろうか。」

とNPOの現状の課題を指摘した。

 そして最後に、

「全体としてのNPOは今後、市民活動団体として自立すること、新しい公益の担い手となること、地域の課題解決組織としての役割も果たすことが必要になるだろう。
 中間支援センターは今後、より専門化したものになり、また、自立した経営を目指す必要があるだろう。その上で、政策提案能力が必要だ。
 全国組織は、今後の社会的方向性を提示していっていただきたい。
 認定NPO法人制度に関しては、認定法人数の増加、また認定のハードルを下げることをめざしていきたい。」

と今後の10年を展望した。

 6名のスピーチを受け、進行を務めた早瀬氏が、

「市民の活動はひろがったのか、行政との関係はどうすべきか、事業のありようはどうあるべきか、リスク管理のために法人格を取得しない団体方針など、多様な団体のありようについてどう考えるか、人材の確保についてどう考えるか、などの問題提起があった。」

とまとめた上で、参加者全員での討議に移った。

 参加者からは下記のような発言があった。

「現状では、市民の主体的な活動が本当に行われているのだろうか。行政側の色が濃くはないだろうか。市民による社会変革、政策提言を行いながら今後活動していきたい。これからの10年がNPOにとっての試金石となるのではないかと感じた。」

「下澤氏が指摘したように、現在の日本社会は市民社会として成熟しているのだろうか。NPOが信頼に足りうるものになるため、きちんとしたアカウンタビリティの仕組み、そのための統一した会計基準の策定が必要ではないか。
 また、藤岡氏が指摘された専門性のある人材、後任者をどのように育成すべきかという問題にも関心がある。」

「アカウンタビリティの問題は単なる情報開示、会計ルールの問題にとどまらないと思う。寄付者が最も求めているのは、ソーシャルインパクトに関する報告ではないか。
 また、寄付者数を増加させることも今後にむけて必要だ。」

「我々の活動分野は少数派であるのだが、法人格を取得したことによって、異なる分野の方々との関係が構築されたことが利点であった。その関係を通して、それぞれの社会課題は、自分たちだけの課題ではなく、社会全体の課題として捉えられると気づかされた。NPO間のネットワークの問題が指摘されたが、必要なところには、ネットワークができていく可能性があるはずだと感じている。」

「なかなかNPOが実際の生活につながっていないと感じている。先日NPOのインターンシッププログラムに参加したのだが、NPOを学びの場、コミュニティとして捉え、高齢者のみでなく若者を取り込むことも考えていっても良いのではないか。」

「私の団体は中間支援組織だが、助成金や受託事業に頼りたくないと考えているものの、受託事業の割合が25%を下まわる事はない。
 中間支援組織がやるべきことは、市民活動団体へ資金がまわる仕組みを提供していくことではないか。」

「今日の話を伺い、「地盤、看板、鞄」、「ヒト、モノ、カネ」の問題はいつまでも付きまとうのかもしれないと感じた。
 一般の人が市民活動に関わっていこうという機運の高まりは感じるが、まだ実際に参加するには不安があるようだと感じる。それをどのようにファシリテートしていけるかが我々の役割かと思う。
 財源の問題はいつまでも付きまとうと思うが、単にノウハウ、哲学の問題にすぎないのではないかと考える。しかし、市民活動団体であるならば、どのように、どこから資金を集めるのか、という哲学を持つことが重要であろう。
 サービス提供事業は、受益者の依存を生む可能性がある。単にサービスを提供するのではなく、自立、主体性醸成に向けて受益者参加のための議論も行っていく必要があるだろう」。

「協働についての議論がされているが、私は「協働」とは、違う利害がある人や、違う立場にいる人たちが、ともに新たな価値をつくることではないかと考えている。NPOと行政の協働を考える際にも、「新たな価値を生み出せるかどうか」という観点から考えてみてはどうか。」

「我々は、市民セクターを確立するために活動してきたが、すなわちこれは市民活動の促進と同じではないかと考えている。
 今まで、中間支援を行ってきたが、その際に基準としてきたのは、きちんと職員を雇用できる団体となれるかどうかであった。もちろん、自分の団体もそうでなければならないと考えてきたのだが、結果としてよい人材を育成することができたことが、とても嬉しい。自立に向けての収益事業についても目途が立ちつつある。中間支援組織がしっかりしていないと、個々のNPOは育たないのではないかと考えているので、今後ネットワークを組みながら、組織基盤を確立していくことが必要だと考える。」

「市民が多様な活動を行うようになったことが、NPO法制定の意義かと感じた。
 今後は、アカウンタビリティ、寄付文化、企業的NPOや行政的NPO等をどう捉えるかなど、様々な課題があるかと思うが、本日は大変勉強になった。」

「市民社会をどれだけ構築できてきたかを考える指標として、寄付というものが出されたが、一方でボランティアという指標もあると思う。ボランティアの労働を金銭換算すると、結構大きな金額が算出される。寄付があまり集まっていなくても、ボランティアの労働も換算して見せることにより、政策提言の際にセクターの存在をよりアピールできるのではないか。」

「NPO法成立前、市民社会の成立は不可能ではないかという意見もあった。
 市民自らが運動に参加していきたくなるような、組織の中で人が育ち続けられる組織でありたいと考えている。そのためどう組織があるべきかと10年間考えてきた。
 指定管理者制度に問題があることは承知しているが、若者の就職難の中で、この制度を利用しての人材雇用が可能になるのではないかと考えている。」

 討議の最後に、進行を務めた早瀬氏が

「この10年は組織と個人の関係が変化し、組織にはさまれて苦しむ個人が増加してきたが、個人同士をつなげるパイプの役割が、社会にはないのではないか。NPOには、「個人をつなげる」という役割ができてきた10年ではなかったか。」

と振り返った。

 また、総合司会の吉田氏が、

「NPO法は完成しないとのことだが、議論を続けていくことこそが本来の姿かと思う。」

とまとめた。

【閉会挨拶】

 閉会にあたり、北村氏が、

「全国から様々な人が集い、かなり厳しい話も含め多くの話ができ勉強になった。今後もNPOセクターのために頑張っていきましょう。」

と締めくくり、閉会の挨拶とした。

文責:高澤洋子(シーズ)

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