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2002年08月08日 10:00

行政 : ホームレス支援で民間団体活用

 7月31日、議員立法で提出されていた「ホームレス支援法」が参議院で全会一致で成立した。行政は、ホームレスの自立支援に関して、民間団体の果たしている役割の重要性を認識し、これらの団体の能力を活用することを求めている。

 

 この法律は、正式名称を「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」。

 10年間の時限立法で、自民、民主、公明、社民、保守の超党派による議員立法の形で提出された。

 この法律でいう「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者とされている。

 法律の目的としては、「自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在し、健康で文化的な生活を送ることができないでいるとともに、地域社会とのあつれきが生じつつある現状にかんがみ、ホームレスの自立の支援、ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関し、国等の果たすべき責務を明らかにするとともに、ホームレスの人権に配慮し、かつ、地域社会の理解と協力を得つつ、必要な施策を講ずることにより、ホームレスに関する問題の解決に資すること」とされている。

 自立の意思があるホームレスに対し、職業訓練や就業機会の確保、安定した居住の場提供や健康診断、生活相談など、自立につながる総合的な対策の実施を国や地方自治体の責務としている。また、国にはホームレスの全国実態調査を行い、自立支援策の基本方針を策定。都道府県や市区町村にも実施計画を作るよう義務づけている。

 法律全体に「民間団体」についての記述が多いのが特徴で、とりわけ第12条では以下のように民間団体との連携を定めている。

(民間団体の能力の活用等)
第十二条 国及び地方公共団体は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を実施するに当たっては、ホームレスの自立の支援等について民間団体が果たしている役割の重要性に留意し、これらの団体との緊密な連携の確保に努めるとともに、その能力の積極的な活用を図るものとする。

 また、財政的支援も盛り込まれており、以下のように定めている。

(財政上の措置等)
第十条 国は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を推進するため、その区域内にホームレスが多数存在する地方公共団体及びホームレスの自立の支援等を行う民間団体を支援するための財政上の措置その他必要な措置を講ずるように努めなければならない。

 ただ、この法律ついては、公園など公共施設の適正な利用が妨げられている時は「管理者が必要な措置を取る」と規定していることから、「強制排除につながる可能性がある」との指摘もされている。

 法文は以下の通り。

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法

目次
 第一章 総則(第一条―第七条)
 第二章 基本方針及び実施計画(第八条・第九条)
 第三章 財政上の措置等(第十条・第十一条)
 第四章 民間団体の能力の活用等(第十二条―第十四条)
 附則

第一章 総則

(目的)
第一条 この法律は、自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在し、健康で文化的な生活を送ることができないでいるとともに、地域社会とのあつれきが生じつつある現状にかんがみ、ホームレスの自立の支援、ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関し、国等の果たすべき責務を明らかにするとともに、ホームレスの人権に配慮し、かつ、地域社会の理解と協力を得つつ、必要な施策を講ずることにより、ホームレスに関する問題の解決に資することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。

(ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標等)
第三条 ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標は、次に掲げる事項とする。

 一 自立の意思があるホームレスに対し、安定した雇用の場の確保、職業能力の開発等による就業の機会の確保、住宅への入居の支援等による安定した居住の場所の確保並びに健康診断、医療の提供等による保健及び医療の確保に関する施策並びに生活に関する相談及び指導を実施することにより、これらの者を自立させること。

 二 ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われる、これらの者に対する就業の機会の確保、生活に関する相談及び指導の実施その他の生活上の支援により、これらの者がホームレスとなることを防止すること。

 三 前二号に掲げるもののほか、宿泊場所の一時的な提供、日常生活の需要を満たすために必要な物品の支給その他の緊急に行うべき援助、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)による保護の実施、国民への啓発活動等によるホームレスの人権の擁護、地域における生活環境の改善及び安全の確保等により、ホームレスに関する問題の解決を図ること。

2 ホームレスの自立の支援等に関する施策については、ホームレスの自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要であることに留意しつつ、前項の目標に従って総合的に推進されなければならない。

(ホームレスの自立への努力)
第四条 ホームレスは、その自立を支援するための国及び地方公共団体の施策を活用すること等により、自らの自立に努めるものとする。

(国の責務)
第五条 国は、第三条第一項各号に掲げる事項につき、総合的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。

(地方公共団体の責務)
第六条 地方公共団体は、第三条第一項各号に掲げる事項につき、当該地方公共団体におけるホームレスに関する問題の実情に応じた施策を策定し、及びこれを実施するものとする。

(国民の協力)
第七条 国民は、ホームレスに関する問題について理解を深めるとともに、地域社会において、国及び地方公共団体が実施する施策に協力すること等により、ホームレスの自立の支援等に努めるものとする。

第二章 基本方針及び実施計画

(基本方針)
第八条 厚生労働大臣及び国土交通大臣は、第十四条の規定による全国調査を踏まえ、ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定しなければならない。

2 基本方針は、次に掲げる事項について策定するものとする。

 一 ホームレスの就業の機会の確保、安定した居住の場所の確保、保健及び医療の確保並びに生活に関する相談及び指導に関する事項

 二 ホームレス自立支援事業(ホームレスに対し、一定期間宿泊場所を提供した上、健康診断、身元の確認並びに生活に関する相談及び指導を行うとともに、就業の相談及びあっせん等を行うことにより、その自立を支援する事業をいう。)その他のホームレスの個々の事情に対応したその自立を総合的に支援する事業の実施に関する事項

 三 ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われるこれらの者に対する生活上の支援に関する事項

 四 ホームレスに対し緊急に行うべき援助に関する事項、生活保護法による保護の実施に関する事項、ホームレスの人権の擁護に関する事項並びに地域における生活環境の改善及び安全の確保に関する事項

 五 ホームレスの自立の支援等を行う民間団体との連携に関する事項

 六 前各号に掲げるもののほか、ホームレスの自立の支援等に関する基本的な事項

3 厚生労働大臣及び国土交通大臣は、基本方針を策定しようとするときは、総務大臣その他関係行政機関の長と協議しなければならない。

(実施計画)
第九条 都道府県は、ホームレスに関する問題の実情に応じた施策を実施するため必要があると認められるときは、基本方針に即し、当該施策を実施するための計画を策定しなければならない。

2 前項の計画を策定した都道府県の区域内の市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、ホームレスに関する問題の実情に応じた施策を実施するため必要があると認めるときは、基本方針及び同項の計画に即し、当該施策を実施するための計画を策定しなければならない。

3 都道府県又は市町村は、第一項又は前項の計画を策定するに当たっては、地域住民及びホームレスの自立の支援等を行う民間団体の意見を聴くように努めるものとする。

第三章 財政上の措置等

(財政上の措置等)
第十条 国は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を推進するため、その区域内にホームレスが多数存在する地方公共団体及びホームレスの自立の支援等を行う民間団体を支援するための財政上の措置その他必要な措置を講ずるように努めなければならない。

(公共の用に供する施設の適正な利用の確保)
第十一条 都市公園その他の公共の用に供する施設を管理する者は、当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする。

第四章 民間団体の能力の活用等

(民間団体の能力の活用等)
第十二条 国及び地方公共団体は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を実施するに当たっては、ホームレスの自立の支援等について民間団体が果たしている役割の重要性に留意し、これらの団体との緊密な連携の確保に努めるとともに、その能力の積極的な活用を図るものとする。

(国及び地方公共団体の連携)
第十三条 国及び地方公共団体は、ホームレスの自立の支援等に関する施策を実施するに当たっては、相互の緊密な連携の確保に努めるものとする。

(ホームレスの実態に関する全国調査)
第十四条 国は、ホームレスの自立の支援等に関する施策の策定及び実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、ホームレスの実態に関する全国調査を行わなければならない。

附則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

(この法律の失効)
第二条 この法律は、この法律の施行の日から起算して十年を経過した日に、その効力を失う。

(検討)
第三条 この法律の規定については、この法律の施行後五年を目途として、その施行の状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

理由
 自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在し、健康で文化的な生活を送ることができないでいるとともに、地域社会とのあつれきが生じつつある現状にかんがみ、ホームレスに関する問題の解決に資するため、ホームレスの自立の支援、ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関し、国等の果たすべき責務を明らかにするとともに、ホームレスの人権に配慮し、かつ、地域社会の理解と協力を得つつ、必要な施策を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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