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2003年の報告

2007年08月29日 14:10

寄稿:台頭する中国のNPO

ビジネス&シビルソサエティフォーラム(北京)報告

 「中国にNPOが本当に存在している?」「あっても政府の言いなりになっているだけではないのか?」。このような疑問を持っている人は大勢いると思う。しかし、ひとりっ子政策や 高齢化社会のさまざまな課題を抱えている以上、民間の参加がなくては乗りこえられないことも言うまでもない。

 一ヶ月前に、北京で開かれたNPO主催の国際フォーラムに参加させて頂いた。その様子をここで報告する。

寄稿:李凡 ( fanli@glinet.org )

グローバル・リンクス・イニシアティブ(GLI)


 20世紀80年代後半以来、驚異的な経済成長を果たした中国。

 その一方、経済と政治・社会面のアンバランスもしばしば言及され、政府(第一セクター)だけの社会の仕組みがもはや限界に来ている。

 1998年、当時の朱熔基総理がはじめて「小さな政府、大きな社会」という新たな構想を宣言した。それから5年、好調が続く経済と政府の規制緩和を背景に中国のNPOと市民社会が急速に台頭し、政府と企業との健全な関係を探りながら、ますます大きな役割を果たしていることが、去る11月9日に、北京で開かれた「ビジネス&シビルソサエティ」と題するフォーラムで浮き彫りとなった。

 フォーラムの主催側は中華慈善総会、中国国際民間組織合作促進会(CANGO)などをはじめとする中国国内のNPO16団体に加え、米国のUnitedwayと米中商工会議所。

 中国国内で初めての企業、NPOと公益活動の関係を取りあげる国際会議としてたくさんの注目を集め、3日間の会議でNPO、多国籍企業、政府、メディアからの参加者が300名を超えた。

 フォーラムの初日は基調講演の部。

 まず主催と協賛側を代表して、中華慈善総会、世界銀行とUNDP(国連開発計画)より開催の挨拶と趣旨説明が行なわれた。それによれば、2003年7月までに、米Fortune500社のうちの430社が中国に進出し、その中の100社を超える企業がアジア地域の総本部を中国に置く計画をもっている。

 一方、中国国内の貧困、環境などさまざまな社会問題はいまだに深刻な状況であり、国連の統計によると、日平均生活水準が2ドル以下の人口は4億を超えている。

 「社会問題の解決に企業の経験と資源が欠かせない。企業はもっと公益活動に積極的に参与してほしい」と中国慈善総会の会長(元民政部副部長)が呼びかけた。

 それに対して、中国民政部、商務部と人民大会常務委員会のトップがそれぞれ短いコメントをし、企業特に多国籍企業の社会参加を促進するための法律、税環境を早急に整備し、規制緩和を積極的に検討・実施したいと述べた。

 基調講演としてマイクロソフト、コカコーラ、シェル、GMなど8つの多国籍企業の中国代表より、中国での社会貢献活動や、CSR(企業の社会的責任)についての取組みの報告があった。(ちなみに日本企業を代表して発言したのは日本国際協力銀行であった。)

 マイクロソフト社は「デジタルデバイドを乗り越える」ことをかかげて、大連など4つの主要都市において、行政と共同で失業者再就職ITセンターを立ち上げた。また、中国最大規模の貧困地域の子供の教育支援プロジェクト、ホップ・プロジェクトにも金銭とソフトウエアの寄付を行なった。

 同じくコカコーラ社も、教育と環境分野に対する寄付に重点を置き、93年からの10年間ホップ・プロジェクトに約3500万元(約4億6千万日本円)を寄付した。

 シェルと製薬会社のノバルティスはビジネスの中の事業そのもののソーシャル・インパクト・社会的影響のマネジメントと、企業の利益関係者、特に社員に対する責任の重要性を強調した。

 シェルは現在、中国の南海地域に、総額43億米ドルの石油化学コンビナートを進めている。このプロジェクトによって地元の住民に就職の機会を与える一方、プラント建設のため、8000人の人たちの移転が余儀なくされた。

 シェルは、プロジェクトのFS実現可能性調査の段階から環境・社会に対する影響の評価(ESIA)をスタートし、開発プロジェクトが地元の持続的な発展につながるかどうかを関係者と慎重に議論を重ねたと言う。

 「シェルの社会貢献は毎年の1.4億ドルの寄付だけではない。毎年の120億ドルの商業活動の中に織り込まなければならない」とシェルのCEOが言い切った。

 企業側の発表に対して、北京大学と中国社会科学研究院からのコメンテーターが、「中国国内企業がなぜ社会的責任に対する意識が遅れているのか?企業のフィランソロピー活動をCSRの中にどのように位置づけるべきか」という質問を投げかけ、参加者と発表者の間に激論が繰り広げられた。

 多国籍企業の社会貢献は中国の市場を開拓するための一種のパフォーマンスにしかすぎない、NPOとの連携がほとんどない、というNPO側からの指摘に対して、企業側は現在の法制度では外資企業が政府機関を通さずにコミュニティやNPOに寄付できないのが大きな問題点であり、また中国には純民間的な意味でのNGOがほとんど存在していない、と反論した。

 論争は、二日目の分科会に入ってからさらに激しくなった。

 NPO側の発言者として、政府が作ったNPOの代表でもある中国児童青少年基金、中国法律援助基金、民間最大級のNPO支援組織である中国NPOネットワーク、国際NGOワールドビジョン、フォード財団、アジア財団などの代表が次々と登壇し、政府―企業―NPOの関係の現状を巡って、法制度の混乱と寄付税制の不整備、NPO自身の力量不足、国内企業の中の「サービス残業」問題や、「政府指令型」の寄付に苦しんでいる中小企業の実情などさまざまな問題点が指摘された。

 私は4つの分科会の中の一つ「企業とNPOとの戦略的なパートナーシップ」に参加し、日本での企業とNPOとの協働の状況を紹介させていただいた。その他にも「国際NGOの経験から」、「中国NPOと企業との協働の現状とNPOのキャパシティビルディング」、「企業の社会的責任」といった三つの分科会、36本のプレゼンテーションがあり、夜の晩餐会では参加者の多くがさすがに疲れ気味の顔をしていた。

 フォーラムの最終日に各分科会の担当者によるまとめの報告が行なわれた。

 企業が市民社会の一員でもあるため(Corporate Citizenship)、企業の社会的責任を経営理念にきちんと反映させなければならない。NPOと企業との戦略的なパートナーシップがお互いにとって非常に重要であり、そのためNPOの力量形成とアカウンタビリィティ(中国語では誠信力と訳されている)が欠かせない、などの原則が繰り返し確認された。

 さらに、フォーラムの締めとして、主催側が政府、企業、NPO、メディア、学者、国際機関に対する「フォーラム要望書」を提案し、参加者全員の意見と賛同を呼びかけた。

 この要望書の中には、NPO法と寄付税制の早期実現、企業理念の中での企業の社会的責任(CSR)SA8000の明文化、NPOの能力向上に対する資金的・人的支援、NPOの情報公開と評価システムの構築、大学・研究機関とNPOとの協働研究など計32項目の提案が盛り込まれた。

フォーラムと同じ会場に展示ブースも設けられており、企業とNGO半々の割合で出展されていた。


 中国からしばらく離れたことが原因であろうか、今回のフォーラムは私にとって「衝撃的」なものであった。

 正直に言って、NPOについての議論と研究が非常に進んでいて、すこし現実離れな感じもした。しかし、既に存在しているNPOについて言えば、日本の多くのNPOよりもずっとビジネスライクで、NPOと企業との話し合いを見ていると、具体的なパートナーシップをその場で話し合ってプロジェクトを起こそうといった意欲が会場にあふれていた。

 また、欧米の企業と比べて、日系企業の公益活動への参加とPRがかなり遅れている印象を受けた。

 中国では日本と同じく「NPO」と言う表現が広く使われている。

 「Independent Sector, Third Sectorまで成長していないので、組織の非営利性、公益性を強調するのはNPOが一番妥当」と、中国NPOネットワークの理事長がそう語った。

 NPOにとって、カネよりもヒトが一番大きなポイントになる。

 ここ数年中国の「中流階級」が急速に増大し、特に海外での教育を受け、ゆたかな経済力も身についたいわゆる「エリート」層が、ボランティアなどさまざまな形でNPO活動に関わっている。もちろん人口の比率を見ればまだまだ少数派ではあるが、それにしても13億人の基数で考えたら無視できない力である。

 私は、国境を超えた人と人とのつながりによって社会問題の新たな解決手法を探りたいという思いをもって、イギリス、日本、中国の友人たちと一緒にグローバル・リンクス・イニシアティブ(GLI)を立ち上げた。

 いま中国の若者の間に、安易なナショナリズムに踊らされた「反日感情」が非常に高まっている。

 「『小さな政府、大きな社会』とは、ヒトができることは政府に任せないこと」と、フォーラムのある発言者の話が耳に残った。私たちGLIの活動を通して、人と草の根団体の交流の橋わたしになることを願っている。

(2003.12.19)


李凡(リ ファン)

 中国江蘇省生まれ。94年蘇州大学日本語学科卒業後、日系ゼネコン会社上海事務所に入社。99年退職、早稲田大学アジア太平洋研究科修士課程に入学。在学中、日産ラーニング奨学生プログラムのインターン生として日本NPOセンターの業務に携わり、2001年4月より企画スタッフとして関わる。主には海外関連事業、機関紙の編集、NPO法・税制改正運動の事務局などを担当。2003年10月退職。2003年11月、イギリスのNPOと一緒にGLI(グローバル・リンクス・イニシアティブ)を立上げ、事務局長に。グローバリゼーションを背景に現れた社会問題をテーマに、日本―英国―中国を中心とするNPOと市民社会の交流・協働を主業務とする。

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