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NPOの信頼性に関する意見

2007年08月23日 17:34

12人の意見(4)田中恭一さん(トヨタ財団プログラム・オフィサー)

<この特集について>

NPOという文字が新聞に出ない日はないくらい、NPOは私たちの生活に身近な存在となってきました。ユニークな活動をしているNPOが、地域にどんどん増えています。

平成17年の内閣府大臣官房政府広報室の「NPO(民間非営利組織)に関する世論調査」でも、NPOという言葉を「知っている(意味もわかる)」あるいは「意味は分からないが見たり聞いたりしたことがある」という人は、85.2%にものぼります。

しかし、同じ調査で、NPOを「信頼できる」と答えた人はたった6.5%。「おおむね信頼できる」の24%を加えても30.5%に留まります。

確かに、新聞やニュースをよく見ていると、NPOのすばらしい活動が紹介されている記事も多い反面、なかにはNPOによる不祥事、時には詐欺事件なども目にします。もちろん、これらはほんの一部のNPOの事例ではありますが、社会のために役立つはずのNPOが、社会を困らせる存在になっているという事実が、全体のNPOのイメージをダウンさせている結果となっています。

シーズ=市民活動を支える制度をつくる会では、NPOの信頼性を高め、情報を流通させ、そのうえで寄付や会員などの形で支援が得られるようにするにはどうしたらよいか、この2年あまりをかけて研究してきています。

その一環として、12人のNPOに詳しい方々に、NPOの信頼性を確保するために何が必要か、というテーマで寄稿をお願いしました。寄稿してくださったのは、NPO関係者、NPOに助成をする立場の方々、企業関係者などさまざまです。この12人の方々のご意見を、このコーナーでは順次ご紹介していきます。

お読みいただき、皆さんもいっしょに考えていただければ幸いです。

(この特集は(独)福祉医療機構(高齢者・障害者福祉基金)より助成を受けて発行した報告書「NPOの信頼性を確保し寄付を集まるためには何が必要か」より転載しています)


第四回 田中恭一さん (トヨタ財団プログラム・オフィサー)

NPOの信頼性確保に重要なポイント

田中恭一 トヨタ財団プログラム・オフィサー

私は、助成プログラムの運営に携わっております。従って、以下では助成実務を通じて、日頃NPO団体における「信頼性」について感じていることを書きます。その際、私が担当している「地域社会プログラム」の選考、および助成先のモニタリングを通じて得た知見を判断材料とします。

●法人格の取得は、「錦の御旗」とはならない

「地域社会プログラム」については、所属団体の紹介に書きましたので、ここでは簡単に「地域社会の再構築」を基本テーマとしている、とだけ明記します。さて、1998年の「特定非営利活動促進法」施行以来、NPO法人数は現在2万を越えています。法人数がそれだけあると、助成金などの資金を必要するMPO法人も相当数存在していると思います。

しかし、「地域社会プログラム」では、「応募団体の法人格の有無は問わない」、つまり任意団体でも応募可能としています。ここには、プログラムが「地元に密着した活動をしている人々を、少額かもしれないが応援する」という理念があります。また、NPO法人も含めて、法人格を取得しているからという事実だけでは、「信頼性」の担保とはならない、「法人格の取得」は「錦の御旗とはならない」というメッセージを込めております。

●「信頼性」はパートナーシップの「入り口」で問題となる

「地域社会プログラム」の選考に際しては、「応募団体の信頼性」も、助成の可否を決定する上で重要なポイントとなります。助成金を契機に、助成財団と助成先の団体との間に「パートナーシップ」関係が生まれます。こう考えると、選考というのは、この関係の「入り口」にあたり、助成の可否を決定する際には、いろいろ細かくチエックします。

ところが、一度「入り口」を通過しますと、つまり「助成が決定」してしまえば、拍子抜けするくらい(適当な表現か疑問ですが)、助成終了(「出口」)まで、助成する側からの干渉は少ないと思ってください。例えば、会計報告も含めて、提出いただく書類は簡単な書式を用意しており、「出口」までの手続きは楽なはずです。一度「入り口」を通過していただいたら、求められれば助言をさせていだたくこともあるかもしれませんが、パートナーとして「出口」まで見守らせていただきます。つまり、助成先を「信頼」します。

ここで、「団体の信頼性」が問題となるのは、選考時であることをおわかりいただけると思います。プログラムの選考に際しては「選考基準*1」を尊重します。これは、選考委員の合議によって決定された共通の「物差し」です。選考では、原則的には「プロジェクトの内容」本位の評価を行い、助成の可否を決定します。

ところが実際には、以下のようなことも起こりえます。「プロジェクトの内容は大変魅力的である。しかし、実施主体に不安がある」場合です。このケースでは、実施主体が、応募プロジェクトを遂行していく上で、「信頼」できる団体であるか、ということが次の評価軸としてでてきます。ここで「信頼性」が問題となってきます。

●「信頼」できない組織とは?

実は、当「地域社会プログラム」の前身となる「市民社会プログラム」では、応募団体の評価基準も用意しておりました。想像に難くないことと思われますが、こうした基準というものは、多くの場合、団体の「過去の実績、力量」に関心が行ってしまいます。一方で、「地域社会プログラム」選考委員会は新規参入を歓迎しているため、今後「当てが外れる」、つまり「信頼を裏切られる」ケースもてでくるかもしれません。

このような状況にあっては、事務局としては「入口」において、可能な限り助成したい団体に関する情報は集めるよう努めていますが、どうしても限界があります。このため、「出口」までたどり着くには、常に「リスク」を背負い続けることになるものと理解しております。ここで、「リスク・マネージメント」ということが問題となってきます。

さて、何を持って「団体のことを信頼できない」、といった「リスク」を感じるかですが、割と基本的なことが原因となることが多いです。

例えば、「プロジェクトについて当初の計画からの変更」の申し出があり、口頭という訳にもいきませんので、理由も含めて文書による提出を求めたとします。A4サイズで一枚以内ですから、たいした分量ではないと思います。ところが、事前に連絡(電話も含めて)がなく、書類の提出が期日を遅れる、こともあります。また、全く連絡がない場合もあります。もしくは、折角提出いただいたのですが、正直何を言っているのかわからない、といったこともあります。

勿論、こちら側の理解力が不足しているのかもしれませんが。いづれにしても、組織としての「コミュニーケション・プロトコール(通信儀礼)」ができていない、といわざるを得ません。こうしたことがおきると、やはり「不信感」を相手に対して抱くようになります。経験則的にも、かような「不信感」を抱かせる組織によって実施されたプロジェクトの「出口」での成果はあまり芳しくないようです。

*1「地域社会プログラム」の選考基準は、1)地域社会活性化の触媒的な役割が認められる(Catalytic)、2)資源の有効活用がはかられている(Composite Resource)、3)非営利性と公開性が確保されている(Coherence)、4)実験的な試みであるものは取り上げる(Creativity)、5)社会への情報発信の工夫が伺える(Communication)の5つ。

2006.05.26


●執筆者プロフィール:

田中恭一氏

1961年東京(世田谷)生まれ。ニューヨーク大学大学院で政治学を学び(1「修士号」取得)、帰国後、1991年より財団法人トヨタ財団に就職。ニューヨーク留学中に、日本協会(ジャパン・ソサエティ)で1年半インターンシップ(有償)を経験。トヨタ財団では、「研究助成」、「(旧)東南アジア・プログラム」等の担当を歴任し、現在は「地域社会プログラム」を担当。佐賀大学経済学部(2001年~2003年)、および国士舘大学21世紀アジア学部(2003年~)で非常勤講師を務める。社団法人総合研究フォーラム(大来塾)第54期生。


●所属団体の紹介:

財団法人トヨタ財団

トヨタ財団は、トヨタ自動車株式会社が、「人間のより一層の幸せを目指し、将来の福祉社会の発展に資する」ことを期して設立した助成財団。生活、環境、自然環境、社会福祉、教育文化等多領域にわたって時代の要請に対応した課題をとりあげ、その研究ならびに事業に対して助成する。現在の主要プログラムは、「研究助成」、「地域社会」、「ネットワーク形成」、「計画助成」である。

「地域社会プログラム」では、「地域社会の再構築を目指して-支えあうくらしといのち-」を基本テーマに、「活動助成」、「活動記録の出版」、そして「広域ネットワーク」分野への助成を行っている。当プログラムは、毎年10月~11月中旬までを公募期間とし、全国津々浦々から多くの応募が寄せられている。

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